法人実効税率の引き下げが議論されています。現在の日本の実効税率は国と地方合計で35.64%(東京都の場合)と、主要先進国の中では米国に次いで高い数字です。税率が高いと、日本の企業の競争力を損ない、海外企業の日本進出を阻む懸念が強いことから、政府・与党は20%台までの税率引き下げを目指す方針です。
経済界は中国や韓国並みの25%程度までの引き下げを求めていますが、安倍首相は『我々が目指すのは、まずはドイツだ』と発言しており、当面は独並みの29%台への税率引き下げを念頭に置いているようです。
本当に法人税は下がるのでしょうか? 法人税率を1%下げれば、約5千億円の税収が減ります。10%下げれば、約5兆円の財源が必要になる計算です。平成25年度の租税及び印紙収入の合計が44兆円弱ですから、そのうちの5兆円というのは大変な数字です。
穴埋めのための財源確保のひとつとして、「法人税の課税ベース拡大」論が浮上しています。課税ベースの拡大とは法人税を支払う対象を広げることです。法人税は企業が生み出す利益に課税される税金ですから、原則として黒字企業しか納税しておらず、さらに黒字企業についても様々な税負担の軽減措置が設けられています。今後は赤字企業にも一定の税負担を求めたり、黒字企業の税の軽減措置を縮小したりして税収を増やしていこうということが議論されているのです。
現在の日本の黒字企業の割合はわずか3割程度で、さらには全体の1%に満たない資本金1億円超の大企業が法人税収の65%を支えています。
法人実効税率引き下げ議論の中で、「法人課税を“広く薄く”負担を求める構造にする」という観点から、次のように中小企業にとっては負担増となる課税強化策が打ち出されています。
法人実効税率が下がると聞いて喜んでいたら、結果として中小企業にとっては逆に税金が増えてしまったということになりかねません。一部の大企業や外国企業のための法人税改革ということになってしまいます。
さらに中小企業のオーナー社長にとっては、法人税の負担が下がったとしても、財源確保のために、その分所得税や相続税が増税になってしまっては法人・個人トータルで考えるとまったく意味がないということになります。
最近では、「パチンコ税」「携帯電話税」「入山税」「犬税」など、さまざまな新税の導入案も報道されており、財政状況が厳しい中、将来は思ってもみなかったものにまで税が課されるようになるのかもしれません。
積もり積もった国の借金が1千兆円を超えている状況の中、所得税・相続税の最高税率の引き上げや、相続税の基礎控除引き下げなどに代表される「大増税時代」が訪れています。
法人税を支払い、所得税を支払った残りで蓄えた財産にまで、最終的には高額な相続税を課税されるという二重課税の制度である日本において、自分の財産を守り、後継者に円滑に承継していくためには、合法的に「税コストを極限まで最小化する」ための知恵を働かせなければなりません。
先日、約4千億円の申告漏れを巡る日本IBMと国税当局の税務訴訟で、東京地裁は日本IBM勝訴の判決を下しました。この判決後、IBM関係者のコメントとして『法律に反しない範囲なら最大限にメリットを追求する』という言葉が報道されていました。
日本の企業は伝統的に大胆な税コスト削減を追求するような租税回避的行動をとってこなかった傾向にありますが、外資系企業は違う発想を持っています。さらに投資側サイドでも、無駄な税金を納めていると、それに対してクレームを行うような風土があります。
IBM勝訴の理由としては、はじめから訴訟を見据え、税務調査開始前に日本屈指の税務弁護士に依頼し、調査手続に違法な部分がないかチェックしてきたこと、今回の取引について、国税が異議を唱えることをあらかじめ想定し、訴訟に耐えうるように、事前にしっかり準備を整えていたことが要因だったと言われています。
その結果、専門家の間でも国税当局の勝利を予想する声が多かった裁判に勝訴することができたというのです。
勝負事は勝たなければ意味がありません。税務調査で指摘される可能性を想定しながらも税メリットを追求するのであれば、事前に万全の準備をし、最終的に必ず申告是認を勝ち取るための対策を講じておく必要があるのです。
かつて「税法は常識で判断できる」と言われていました。それを表すように税法には「社会通念上相当」という表現が往々にして登場します。しかし、経済社会の複雑化・国際化に伴い、税法も本当に難解になっています。
このような時代に税メリットを追求した最適なタックスプランニングをどのように行えばよいのでしょうか。
お客様の状況はすべて異なります。私達は最初に、財務状況・財産状況・ご家族の状況などを分析させていただき、お客様固有の税務上の問題点について、医者がCTスキャンをかけるように探っていきます。法人・個人を一体として考えたお客様の現状分析です。
その上で、法人税・所得税・将来の相続税までを中長期的、網羅的に考えた対策案の立案を行います。
税メリットを追求するためには、単一税目だけで考えず、複合的に考えて税金を最小化することが重要です。また、グローバルな時代では日本国内だけの対策だけではなく、海外を活用することを視野に入れると大きな効果が得られることもあります。
私共『税務総合戦略室』は、様々な経歴を持った各税法の専門家が在籍していることが大きな特徴となっております。各々の専門家が力を合わせ、チームとして、お客様の最適な税務対策のためのサポートをさせていただきます。
税務総合戦略室便り 第57号(2014年08月01日発行分)に掲載
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