今年から「オーナー経営者のためのお金の増やし方」という経営セミナーを続けており、おかげさまでこれまで計480名のご参加をいただいております。セミナー後、希望される方には私と一対一で90分間の個別相談を行っています。
前回は、この個別相談にみえたある経営者のエピソードを紹介しつつ、「お金」というものについて深く考えてみました。
今回も引き続き個別相談に見えた経営者の方にご登場いただき、成功者とはいったいどういう存在なのか、考えてみたいと思います。
90分間の個別相談の料金は5万円です。5万円を払って一対一で面談したいと希望された方は、これまで49名おられます。480名の参加者のうちの49名ですから、だいたい10%程度です。
この個別相談が、実に楽しいのです。個別相談で初めてお会いする方はいずれも素晴らしい経営者で、事業でもしっかりと成功をつかんでおられます。そのお話に私自身も大きな刺激をいただけるからです。
したがって、「相談」とはいえ、みんながみんな特別に具体的な悩みがあって、その答えをもらいに来るわけではありません。商売がうまくいかない、資金繰りが苦しい、税金が出すぎて困っている、何か良い方法はないか? そんな相談は、これまでの個別相談であまり聞いたことがないのです。
セミナーの内容は、私自身の失敗と成功の歴史であり、また1万人のオーナー経営者を見てきた私自身の、ほかにはない「成功法則」のお話です。成功をおさめている経営者に限って、私の話にインスピレーションを感じ、実際に一対一で話してみたい、面談したいとお考えになるのです。それだけ貪欲に人生を生き抜こうとしているのだと思います。
個別相談に見える経営者は、特に困っていないのになぜ相談に来るのでしょう。それは、自分に欠けているものを知りたい、あるいはセミナーの大きなテーマである「金持ち・時持ち・夢持ち」とはどういう人間なのか、そうなるために自分には何が必要なのか、そういった深い問題を私と一緒に考えてみたい、そういうことではないかと思います。
先週、相談に見えたAさんもそうでした。具体的な相談はとくにはない、と言います。ではなぜ来たのか。Aさんは、個別相談のためのアンケートにこう書いていました。
「野本先生には自分と同じ匂いを感じます」
そして、次にいらっしゃた時に、
「株式会社エヌエムシイがユニークな集団であるという印象も受けたので、今後深いお付き合いをさせていただく相手としてふさわしいかどうか確かめに来ました」
と、おっしゃっていました。
そもそもAさんがセミナーに参加したきっかけは、たまたまポスティングされた当社のセミナー告知のチラシを見たからです。当社や私のことをまったく知らなかったAさんにとって、そんなチラシは一瞥してごみ箱行きになるのが普通です。
ところが、何かをお感じになったのでしょう、セミナーに参加され、さらに私個人に近づいてきたのです。
実際にお会いし、お話を聞いて、びっくりしました。
Aさんは51歳の医師で、ある開業クリニック(医療法人)の院長です。これが普通のクリニックではありません。従業員は医師が50名、スタッフが100名、1日に来院する患者数は800名。年商30億円、利益は数億円だそうです。
ご自身の報酬はもちろん、従業員の給料もすごい。新卒1年目の年収が500万円で、3年勤めると700万円にもなるというのです。20代女性で年収1000万円のスタッフがごろごろいるそうです。
しかし、クリニック経営は最初から順風満帆ではありませんでした。開業17年になりますが、最初の10年は苦労の連続でした。それが、ある変革を行ってから経営は面白いように好転していったのです。
それは人材でした。
Aさんのクリニックでは、それまで医療事務などの経験者を中途で採用していました。それをすべて新卒採用に切り換えたのです。その理由はなんだったのでしょう。
たとえば病院の窓口スタッフというのは、医療事務が本職でも、さまざまな業務をこなさなければなりません。受付、診察の予約、患者さん対応等々、細やかな心配りが求められます。
ところが中途採用の人材は専門職として入ってきますから、そこまでオールラウンドな窓口業務は教育されていません。Aさんがそれを徹底的に求めると、辞めてしまうのです。そのたびに人材を補充しなければならず、入ってもすぐに辞めてしまう。その繰り返しで、苦労されていたそうです。
そこでAさんは、まったくまっさらな状態で社会に出てくる大学の新卒を採用して、自分のクリニックのスタッフとしてみっちり鍛え上げていくことにしたのです。
これが成功しました。患者数は増え、経営数値は上向きました。いまやクリニックの女性スタッフは、英語やドイツ語で書かれたカルテを読みこなし、医師と患者さんの橋渡し機能を果たし、さらに受付業務や患者さん対応もしっかり行うという、スーパーウーマン集団なのです。
結果として、このクリニックでは人の3倍の仕事を行うようになりました。だから一般の2倍の給料を払ってもお釣りがくるのですと、Aさんは言います。
新卒の採用募集には1000名もの応募者があますが、実際に入社するのは20名程度。1年たって残っているのは5名ほど。しかし1年続けば、あとはずっと続くのだそうです。まっさらな新卒者を徹底して厳しく指導し、染め上げているのです。
そんな話を聞いたら、すぐに現場を見たくなるのが私です。社員を2グループに分け、15名連れてクリニックを訪れ、業務のバックヤードを見学させていただきました。私たちは心の底から感動しました。
クリニックですから、間違いは許されません。カルテなどの管理は、1ミリたりともずらさないほど完璧に行われていました。院長の要求レベルは非常に高いのですが、とくに奇抜なことをやらせているわけではありません。本当に必要で重要な業務の質を徹底的に磨いている印象でした。凡事徹底です。それが感動するほど素晴らしかったのです。
スタッフの無駄のない立ち回りを見ていると、徹底的に教育されていることがすぐにわかります。実は、それを可能にする環境が整っているところがすごいのです。
経営者なら誰でも「3倍働いてくれたら給料を2倍にしてあげるよ」と言いたいでしょう。しかし、人は、2倍の給料がもらえるからといって3倍働けるものではありません。働く時間を3倍にするという意味ではないのです。Aさんのクリニックには、人が3倍働ける仕組みと環境が完璧に整えられていました。
従業員はやりがいのある仕事を生き生きとこなし、高額の給料をもらう。その素晴らしいサービスを受けた患者さんも喜んで、気持ち良く受診できる。クリニックの経営もうまくいき、経営者の目的も達せられる。仕組みと環境をしっかりつくることで、すべてがうまく行くのです。
Aさんが素晴らしいのは、経営者としてだけではありません。
個別相談の席でAさんは、「自分はまだ51歳で若い、今後間違った方向へ行くかもしれない、そういうときにはぜひアドバイスしてほしい」と、私に言いました。これが、素晴らしい経営を実践し、大きな成功を納めている人の言葉なのです。
またAさんは、「従業員にはもっともっと給料を取ってほしい」と言います。そして「これから100年続くクリニックをつくっていきたい」とも言っていました。
開業医院というのは、一般的には一族で継がれていくものです。利益もできるだけ一族で分け、従業員は最低限の(一般的な)報酬で雇うというのが当たり前です。Aさんはそうではなく、100年続くクリニックを考えている。従業員の報酬はその一つです。また、自分の後継者となる2代目は従業員の勤務医から選ぼうと考えています。そして、次の3代目は自分の息子に継いでほしい、さらにその次の院長はまた外部から、そのようにしてクリニックを永続させたいのだそうです。
これはまさに、今、私が当社の将来を考えてやっていることです。
Aさんは決して札束で人を動かしているわけではありません。そこに経営者としての、さらに人間としての魅力が感じられるから、従業員はみずから厳格に働こうとするのです。
Aさんの話を聞いていると、20年前の私がそこにいるような気持ちになります。私と同じような思いで経営をされているAさん、そしてその現場を目の当たりにして、本当に嬉しく幸せな思いで帰ってきたのです。
個別相談にみえた経営者をもう一人、紹介しましょう。
Bさんは49歳、ダンスホールの社長です。ダンス教室やホールレンタルの事業で、年商は8億円。開業して18年、やはり最初は苦しかったが5年ほど前から良くなってきたそうです。どの成功者にも、同じように苦しい時期があるものなのです。
Bさんはとても穏やかな方で、お話しされる態度も素晴らしい印象を受けました。セミナー後に書いていただくアンケートには、このように書かれてありました。
「私は日本人として、毎朝先祖様に感謝をしている人間として、先生のお話を聞き、この母国をこれから立て直し、世界一素晴らしい国にするんだという思いを新たにしました」
Bさんは毎日、朝晩、仏壇に手を合わせているそうです。そして、相談の際にこの様にお話しされていました。
「ご先祖様がいるから自分がいる。ご先祖様のいろいろな力で私は今、いろいろなことができる。そのことを忘れてはいけないと私も思います」
そんな話をされる人は初めてです。そういう方が偶然にも私のセミナーに参加され、個別面談で実際に私と会うことになる。「類は友を呼ぶ」と言いますが、それが縁なのだろうと私は思います。
成功した経営者にも、いろいろな方がいます。しかしどのような人も、必ず成功する要素を持っています。何かのやり方を知っているのではなく、成功する資質を持っているのです。そうした世の中の成功者(およびその予備軍)のみなさんと出会い、お互いに共感して気持ちを高めることができることは、私自身ものすごく幸せで嬉しいことです。
縁とは不思議なものです。個別相談には、こちらも落ち込んでしまうようなマイナスイメージを抱えた人はやって来ません。そういう方はエネルギーの方向が違うから、私の話を聞いてもどこかで反発してしまうのでしょう。そもそもセミナーに参加することもないと思います。
私は自分で運が良いと思っていますし、私が出会って意気投合する方もすべて運が良い方ばかりです。運が良い人は運の良い人を敏感にかぎ分け、お互いに吸い寄せられるように出会うのです。そして交流しながらお互いの運を分け合う、だからいっそう運が良くなる、どんどん成功していくのではないかと思います。
成功者がすべからく「縁」を大切にするのも頷けます。
何をもって失敗か成功か、一概には言えません。しかし運の良い仲間をつくっていくこと、運のいい人が周囲に集まってくる自分になることは、重要だと思います。自分は運が悪いと思っている人も、愚痴を聞いてもらえる人を探すのではなく、明るく楽しく前向きに人生を楽しんでいる人を探し、自ら積極的に交流すべきです。そうすれば、自然に自分にも運が向いてくるでしょう。
そんなことも、個別相談を通じて感じているところです。
弊社の経営セミナーには多くの経営者の方にご参加いただいております
税務総合戦略室便り 第58号(2014年09月01日発行分)に掲載
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