税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第59号 >  成功者になるための法則その9 「無縁墓」

成功者になるための法則その9 
「無縁墓」

category: その他
第59号(2014年10月01日発行分)
エヌエムシイ税理士法人 会長・税理士
野本 明伯

先日は、秋分の日でした。お彼岸の中日はどこの墓地もお墓参りの人たちで混雑していると、ニュースで報道されていました。読者のみなさんも、ご先祖様のお墓にお参りされたことと思います。
 ところが同じ日、NHKでは、手を合わせてもらえなくなった「無縁墓」が10年前の2倍以上に増えている、という内容の特集番組を放送していました。引き継ぐ人がいなくなって放置されたお墓が、いま次々に撤去されている、というのです。

 専門家は「都市への人口集中に加え、ふるさとや先祖を大切にする考え方が変わってきている。墓を守り続けることにこだわらない世代が高齢者となるなか、墓の無縁化はさらに進むだろう」と指摘していました。
 無残に撤去されていく墓石の映像を見て、私は思いました。もし自分があのお墓に入っていたら、どれだけ悲しい、寂しいことだろうと。

 ご先祖様を無縁にしてはいけない。それはいちばんの基本ではないかと思います。今回は、この「無縁墓」のニュースに接して私が考えたことを述べてみたいと思います。

目には見えない力に感謝する

70歳になって人生を振り返ってみると私自身、本当に運の良い人生を歩んできたと思います。
 両親のもとに生まれたということが、そのいちばんの始まりです。ご先祖様があって両親がいて、生を受け、いま現在の私がある。それは間違いのない事実で誰も否定できません。だから先祖を敬うことはいちばんの基本ですし、まったく当たり前のことなのです。

 成功者に共通しているのは「運を持っている」ということですが、その成功譚に必ず出てくるのが、ご先祖様を敬う、親を大事にするということです。毎日、ご先祖様に手を合わせ、お墓に花を手向ける、そういうことを当たり前のこととしてやってきた人に「運」が味方するのではないかと、私は考えています。

 私たちはつい目に見えるもの(お金、モノ)で判断してしまいますが、本当は目に見えない力によって守られ、チャンスに巡り合い、成功に導かれているのです。そのことを忘れてはいけません。その力によって今の自分があることに、感謝しなければいけません。

縁を大切にし、運を分け合う

28歳で独立して43年間、私は節目節目で素晴らしい人に巡り会ってきました。そのたびにその方たちの運に引き立てられ、チャンスをつかみ、成功の道を歩んできました。私の運とは、そのようにして、みなさんに分けていただいたものなのです。

 それは、私と巡り会って縁を結んでいただいた方々もまた、同じではないかと思います。私の運に引き立てられ、チャンスをつかんでいき、成功しているのです。
 「類は友を呼ぶ」と言いますが、運の良い人は運の良い人を選り分け、巡り会い、その縁を大事にすることで、お互いの運を大きくしていきます。縁というのは本当に不思議なものだと思うのです。

10万人に一人の強運

私が会計事務所を開業して3人目のお客さんは、縫製工場の社長さんでした。霊力の強い方で、自宅に祭壇をまつり、毎日お参りされていました。

 会社を設立したいと考えたとき、私はこの社長さんに社名の命名をお願いしました。社長さんはさっそく私の自宅にみえ、次のような話をされました。
「野本さん、あなたの運勢は10万人に一人。東京に出て事業を拡大し、必ず成功を収める人間です。だから、今回のいわきでの新しい会社の名は『野本マネジメントセンター』としなさい。そして東京へ出たときには『エヌエムシイ』としなさい」

 当時、自分が東京へ進出するなんて考えてもいませんでした。東京で大成功するなんて信じられませんでした。しかしいま考えると、このときの「あなたは10万人に一人の強運の持ち主」という言葉がずっと心の支えとなって、ここまで邁進できたと思うのです。
 これが「運をいただく」ということではないでしょうか。運をいただき、言葉どおり実行することによって、ご恩返しをさせていただいたのだと思っています。

事務所の土地を手に入れた

開業当初、私の事務所は自宅の6畳一間でした。しかし心の中では、いずれ事務所を借りて移転しなければと考えていました。

 開業2年目のことです。県立公園近くにある70坪の松林が売りに出されました。海が見える角地で、価格は270万円でした。私は非常に気に入り、購入したいと思いすぐに銀行へ行きましたが、借入れは断られました。1年目の売上高は200万円、払った税金は所得税ゼロ、市県民税200円だったのですから当然です。
 その数か月後、今度は開業5番目の自動車板金業のお客さんから「土地を売りたいから、買う人を紹介してくれ」と言われました。私は物件の場所をうかがい、自転車を飛ばして見に行きました。いわき税務署にほど近い、広大な土地でした。「これはいい」と思った私はすぐに自転車で戻り、「社長、私が買います」と言ったのです。

 ところが、その土地は社長の祖父のものでした。私は再び自転車にまたがり、社長の祖父の家まで飛んで行き、お願いしました。
「おじいちゃんの大事な土地、私がずっと大事に使います。どうか私に売ってください!」
 270坪の土地は、4500万円でした。とてもそんなお金はないし、借りることもできません。
「でもお金がないんです。土地を3等分して90坪ずつ、1500万円分5年ごとに購入します。いかがでしょう!」

 私の熱意を感じてくれたのでしょうか、おじいちゃんは「いいよ」と言ってくれました。
 270万円を貸してくれなかった銀行ですが、今回の1500万円は貸してくれました。土地に担保価値があり、親戚が担当者だったせいかもしれません。
 こうして手に入れたのが、現在の野本会計事務所の土地です。

謎の男と交わした賃貸契約

土地購入のために銀行から借りたお金の返済は、6ヶ月据え置きで月々24万円で、目処が全く立っていませんでした。ところが、また救世主が現れました。
 私が購入した土地には、延べ270坪の古い倉庫が立っていました。購入して半年後、すなわち第一回目の返済が始まる月に、その倉庫を「今日から借りたい」と言う男が現れました。その人は私のところへ来てこう言うのです。
「正式に借りたいが、いま契約書を交わすことはできない。私の名前も、明かせない。1週間後には必ず名乗るから、オレを信じて貸してくれ」
 わけがわかりません。しかし、借りてもらえれば月々の返済は家賃で払えます。私はその人を信じ、月々24万円で貸すことにしました。
 口約束だけの契約で、相手が誰か、名前すらわからない。さすがに心配になって翌日倉庫を見に行くと、そこには農機具がたくさん置かれていました。ある大手農機具メーカーの代理店が倒産しそうになったので、その前に在庫を引き上げたのです。謎の男は、その農機具メーカーの仙台支店長でした。
 私は月々の返済を家賃で賄うことができるようになり、2年後には貸していた一部、30坪を返してもらって野本会計事務所の事務所としました。そしてその後も、お客さんが増えて事務所を拡大するたびにその一部を返してもらい、最終的には倉庫全体270坪が野本会計事務所の事務所になったのです。

 人間はとかく器の大きさによって、考え方や行動が制限されてしまいます。もし、30坪の事務所を借りたならば、それに見合った仕事量であり、社員数になっていたでしょう。
 270坪の事務所を構えると、最初は大きすぎてパラパラとしているかもしれませんが、やがてその事務所を社員で一杯にするのだと潜在意識に強く思い込ませると、その様になるものです。
 この土地と倉庫のおかげで、野本会計事務所は飛躍的に成長・拡大しました。この土地と倉庫がなければ、いまの私はなかったのです。

税理士になったのも「縁」

私の人生には、このような不思議な縁がたくさんあります。その縁を大切にしているだけで、自然に現在の自分になっているように思えます。
 もう一つ、現在の私をつくった最初の大きなご縁をご紹介しましょう。
 大学4年生の夏でした。私はまだ就職も決まっていないのに、友人と二人で大島に遊びに行きました。
 帰りは、東京へ直行する船と熱海へ行く船がありました。私は友人とまっすぐ東京へ帰るつもりでしたが、結局、熱海経由で帰ることにしました。これが運命の別れ道でした。
 熱海には当時リッカーミシンの保養所があり、私のおじがそこを経営していました。たまたま当時リッカーミシンの顧問をされていた日本大学教授の油谷従爾先生が、その保養所に泊まっておられました。私の就職のことを心配したおじは「油谷先生の話を聞いてみたらどうか」と勧めてくれたのです。
 私は油谷先生とお会いすることにしました。そして、そのとき初めて、税理士という職業を知ったのです。
 私は油谷先生の素晴らしい人間性に魅かれ、また税理士という職業にも興味を抱きました。そして税理士になることを決心し、卒業後は油谷先生の家に住み込みで税理士試験の勉強をするようになったのです。
 あのとき油谷先生が熱海の保養所にいなかったら、もしも私が大島から直行便で東京に帰っていたら、私は税理士にはなっていませんでした。野本会計事務所もなかったのです。
 私は運良く油谷先生と出会い、その縁を大切にすることによって、成功への道を歩んだのだと思います。

お墓をきれいにして、自宅を新築

私は39歳のときに、故郷のいわき市に自宅を建てました。
 私は自分の家を建てる前にどうしてもやっておくべき大事なことがあると考え、そちらを先行させたのです。それは「ご先祖様のお墓をきれいにつくり直す」ということでした。私はお墓をつくり直したうえで、自分の家を新築したのです。
 なぜ、私はお墓の新築にこだわったのでしょうか。それは、数年前にこんな経験をしていたからでした。
 私は現在の自宅を建てる前に、いわき市の郊外に小さな家を建て、そこで5年ほど暮らしていました。あるとき近所で葬式があり、隣組の一人として私も駆り出されました。
 葬式のとき、近所のみなさんと一緒に墓地へ行きます。そこで私には気づいたことがありました。どのお墓もひどく荒れていたのです。
 周辺は、建て直したばかりの立派な家が立ち並んでいます。しかし、お墓のほうは対照的に、ほとんど手入れがされていません。その差を感じて私は「順番が違うのではないか」と思いました。
 自分たちの家を建て替えるより大事なことがあるのではないか。ご先祖様のおかげで自分がいて、ようやく家をつくれる身分になったのです。そのおおもとであるご先祖様のお墓を荒れ放題にしたまま、どうして自分の家を新築できるのでしょう。
 私は寂しい思いにとらわれ「自分はそうはしない」と決心したのです。

素直な心で、ご縁に感謝!

毎朝仕事に出る前、毎晩寝る前、感謝の心を込めて仏壇に手を合わせる。原価はゼロです。ご先祖様への感謝で一日をスタートし、また一日を終える。それを続けることで得られるものは、とても大きいはずです。
 何かのためにやることではありません。運が良くなりたいからご先祖様を大切にするのではないのです。とくに宗教に結びついていなくてもかまわないと思います。ただ純粋に人の心の持ちよう、それだけです。
 ご先祖様を大切にする、「縁」を大切にする。それは人の素直さから来るものではないでしょうか。そのような素直さが結果として運を呼び、成功を呼ぶのでしょう。それが成功する人間の資質なのです。
 何歳になってもいつも素直に、ご縁を大切にし、感謝しつづける。そんな心を持ち続けたいと思います。

旧 野本会計事務所社屋

税務総合戦略室便り 第59号(2014年10月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP