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「競馬の払戻金は一時所得か雑所得か」の判決について

category: 所得税その他
第59号(2014年10月01日発行分)
元国税調査官・税理士
大柳 和二

平成26年5月9日に大阪高裁で、競馬の馬券の払戻金に係る所得について、一時所得か雑所得かが争点になった裁判の控訴審の判決が出ました。
 この記事を見て、昭和51年頃、署で確定申告相談をしていた時に、ある営業者の「競馬で大きな金額の払戻金があった」という話に対し、競馬の払戻金は一時所得として申告しなければならないと説明したことを思い出しました。
 最近は、競馬の馬券購入もパソコンや携帯電話によるインターネット購入によるものが主流ですが、私が競馬を始めた昭和50年頃は、場外馬券売り場まで足を運び、売り場の窓口に並んで馬券を買うというやり方でした。
 当時は馬券の種類も単勝、複勝、枠連だけでしたが、今はそのほかに馬連、馬単、三連単、三連複、ワイドと多種類であり、人によっては競馬予想ソフトを利用して購入していますし、また、当たり券の払戻金も多額となっています。さらに、インターネットによる馬券購入の場合、購入代金および払戻金の決済は預金口座を通して行われることから、取引履歴は記録化される時勢であります。
 今回の裁判は、納税者が競馬の利益を雑所得として申告したところ、課税庁は所得税基本通達34-1(一時所得の例示)により一時所得に当たるとして、はずれ馬券の購入費を必要経費と認めなかったが、控訴審判決は必要経費として認めたというものであります。
 判決の趣旨は、馬券購入行為の態様、規模その他の具体的状況に照らして、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得」に該当すれば一時所得ではないと判断しました。また、はずれ馬券を含む馬券の購入がなければこのような払戻金を得ることができなかったため、はずれ馬券の購入費も払戻金を得るために「直接要した費用(37条1項)」に当たるとしました。
 これに対し、検察官は競馬の本質は賭博であり、勝敗は偶然の事情であり、各競争は独立したものだから、いくら繰り返されても継続的行為とはならないと主張しましたが、判決は賭博であること射幸性を有することは、営利性や継続性といった要件を否定するものではないと判断しました。
 今回の判決に則って、あるレースで合計100万円の馬券を購入し、その内、1万円の馬券が当たり、100万円の払戻金があった場合を例にして所得計算します。この場合の税法上の取扱いは、一時所得として100万円-1万円=99万円が算出され、そこから特別控除50万円を差し引いた49万円の2分の1の24万5千円が所得として課税されます。
 しかし、雑所得となれば、はずれた馬券の購入分も必要経費となり、その結果、100万円-100万円で所得は0円となって、課税所得の計算に大きな差が生じます。また、雑所得となれば、他の雑所得との損益通算が可能となります。例えば、年金受給者が馬券を購入し損をした場合、公的年金の所得と競馬等の損失が相殺されることから、その所得を確定申告することで年金の源泉所得税が還付されることになります。
 一競馬ファンとしては、馬券の払戻金に係る所得は通達による一時所得課税を見直して、雑所得として課税を行うべきだと思います。そして、国が懸念する競馬の赤字で他の雑所得の黒字が消されてしまうことに関しては、今年の所得税改正においてゴルフ会員権の譲渡損失を他の所得と損益通算できないように規定したように、競馬の損失は他の雑所得と損益通算をできないよう所得税法の改正を行うことが良いと思います。
 ちなみに、JRAは全額政府出資の特殊法人で、100円の投票券売上につき10円を国に拠出し、さらに、決算により諸経費等を差し引いた利益金が発生すれば、その金額の25%を国に第2拠出金として支払っています。その金額は平成25年度で2553億円となっています。
 この数字から見ても、競馬は国民レジャーとして身近なものとなっており、競馬ファンは年々増加している状況にあると思います。

税務総合戦略室便り 第59号(2014年10月01日発行分)に掲載

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