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元国税調査官が語る国際税務解説 第三十一回 
国外送金調書と税務調査(その一)

第60号(2014年11月01日発行分)

その他

1. 最近の調査の傾向

最近の税務調査の傾向として、国外送金調書を端緒として調査選定が行われていると想定される案件が増加しているように感じます。
確かに、今年から国外財産調書の提出制度が導入され、年度末に国外財産を5000万円超保有している者は税務署に調書を提出する事が義務付けられたこともあり、国外送受金に対する当局の監視の目が、以前にも増して強まっている事は間違いありません。

余談になりますが、国外財産調書につきましては、最近のプレスリリースによりますと、初年度の提出者は全国で約5500件だったそうです。また、財産金額の内訳は有価証券が62%で最も多く、その後、預貯金、建物、土地と続いています。
 個人的な感覚としては、「5500件は少ないのでは」というのが正直なところですが、不提出の罰則は来年度提出分から適用となりますので、様子を見た上で、来年から提出するかどうかを決めようとしている者が相当数存在しているのではないかと思います。

2. 国外送金調書

国外送金調書の制度は平成10年に導入され、当初は200万円超の送受金が提出対象でしたが、その後、この基準が100万円超となりました。したがって、100万円超の国外送受金を行っている者の情報は、金融機関を通じて税務署が把握していることになります。
 では、一般的に税務当局が国外送受金の内容を把握した場合、どのような課税もれを想定しているのでしょうか?
 今回は、海外へ送金した場合について、送金理由ごとに解説したいと思います。重要なポイントは、たとえ海外で発生した所得であっても、日本の居住者である限り、全世界所得課税として日本での所得税の申告義務が生じるということです。

1.国外銀行への預金のための送金

通常、預金の利息は少額であること、また、日本の銀行で生じた預金利息の取扱いは源泉分離で課税関係が終了し、利息について確定申告を行う必要がないため、国外銀行の預金利息について、申告することを忘れているケースがよくあります。
しかし、海外の銀行で生じた預金利息については、日本での源泉徴収は当然行われませんので、最終的に総合課税として日本で確定申告をすることによって精算しなければなりません。ただし、サラリーマン等の場合で、利息の年間収入が20万円以下の場合は確定申告は不要です。

2.国外の株式やファンド等を購入するための送金

国外の株式やファンド(以下、ファンド等と表記します)から生じる配当や売却益についても、全世界所得課税として日本で申告する必要があります。
 特に、課税漏れとしてよくあるケースは、既存ファンド等を新しいファンド等に買い替えた場合で、旧ファンド等売却分の譲渡対価を新ファンド等の取得代金に充当する場合です。この場合、旧ファンド等の譲渡対価については自分の手元には戻っていませんが、その時点で一度売却はしていますので、売却益が生じていれば、課税関係は当然生じることになります。
 ファンド等に売却損が生じている場合は、同年に他のファンド等の売却益が生じていれば、株式譲渡所得内での損益の相殺は可能となりますので、申告をした方が有利になるケースもあります。ただし、海外のエージェント等を通じて現地でファンド等を直接購入する場合、株式譲渡損失の三年間繰越控除の適用はできませんので、注意が必要です。
 売却する際の売却損益の計算方法についてですが、外貨建てで購入・売却した際に生じた為替差損益は売却損益に含めることになりますので、為替差損益部分を別途、雑所得として認識する必要はありません。
 また、「海外ファンド等保有=申告」と勘違いしている方もよくいらっしゃいますが、海外には無分配型のファンドもよくあります。保有しているファンド等の価値が上昇した場合についても、最終的に売却した時点で課税されますので、期末の評価益については課税されません。

【次回へ続く】

税務総合戦略室便り 第60号(2014年11月01日発行分)に掲載

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