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税務総合戦略室 室長通信 第二十七回 
税制改正を見据えたタックスプランニング

category: 税理士節税
第60号(2014年11月01日発行分)

執筆者1

10月22日の日経新聞1面に、「海外移住 税逃れ防止 富裕層の株含み益に課税」という見出しの記事が掲載されました。
 記事の内容は、富裕層の税逃れ対策を強化するため、『1億円を超える金融資産を持つ日本の居住者が海外に移住する場合は、株式などの含み益に対し所得税を課税する』という税制改正を2015年度からの実施を目指し導入するというものです。

 このニュースにピンとこない方もいらっしゃるのではないかと思いますが、国内に住んでいる個人投資家が株式を売却した場合、その売却益に対しては所得税15%と住民税5%の合計20%が課税されています。仮に含み益のある株式を売却せず保有したまま海外に移住した後に売却すると、原則、非居住者として日本の課税権からは除かれ、移住先の国が売却時に課税することになります。
 ここで、その投資家が、金融資産の売却益に課税しない国、香港やシンガポール、スイスに移住した場合には、結果として売却益に税金は一切かからないことになるので、富裕層の節税策と言われていたのです。

「税逃れ」ではない

今回の報道で私が違和感を抱いたのは「税逃れ防止」という表現です。
 国によって税法は異なり、課税の要件や課税される税率に差があります。租税条約では、原則として株式を売った個人が「居住する国」が課税権を持つことになっており、たまたまその人が移住した先ではキャピタルゲインには課税しないという法律になっていた場合、税金が一切かからないのであって、法に違反して税金を免れているわけではありません。日本の国と移住先の国との法律の違いから生まれた結果です。
 国による税制の違いは大きな納税額の差をもたらします。日本では来年の1月から相続税の増税が行われ、最高税率が55%に上昇し、基礎控除額も4割縮小されます。この改正を受けて新聞、雑誌にも連日のように相続税対策の特集が組まれていますので、目にされた方も多いことでしょう。
 その一方、世界には相続税のない国が多数存在し、例を挙げれば【香港・中国・シンガポール・オーストラリア・ニュージーランド・マレーシア・タイ・スイス・モナコ共和国・リヒテンシュタイン】などでは、相続において税金が徴収されることはありません。その他の国でも、「相続税はすでに課税済みの財産にかかる二重課税の制度である」として税率を引き下げに動いている例も多いのです。
 どこの国で暮らすのかはその人の自由です。移住の理由は税金だけではありません。日本の様々なカントリーリスクを憂慮して生命や資産保全のために、子供の教育環境を考えて、物価の低さや気候条件を考えて、などなど、その人固有の理由で海外移住した結果、たまたまその国の税金が日本の高額な税金と比較して安かったからといって、その移住を「税逃れ」と呼んでよいのでしょうか?
 このような海外移住時の課税は「出国税」と呼ばれており、実は米国、フランス、ドイツなどではすでに導入されている制度です。日本でも近い将来導入されるのではないかと噂されていましたが、ついに……という感じがしています。
 今年から始まった国外財産調書報告制度や今回の税制改正は富裕層の資産の海外流出(キャピタルフライト)や海外移住を防ぐための方策ですが、このように富裕層ばかりを狙い撃ちした課税強化は、逆に富裕層の日本離れを加速させるものになっているという指摘もあります。

租税回避スキームと税制改正

相続税・贈与税に関してはこれまでも様々な税制改正が行われてきました。
 平成11年当時の相続税法では居住者が、非居住者に対して、国外財産を贈与した場合、贈与税は課税されませんでした。この取り扱いを活用した租税回避スキームを行ったとして、いわゆる「武富士事件」が争われ、最終的に最高裁で国は敗訴し、還付加算金400億円を加えた総額2000億円もの還付を行ったことは大きな話題となりました。
 この問題をふまえ、平成12年度税制改正では、贈与者と受贈者いずれも(例えば親子ともども)5年超日本の非居住者でなければ贈与税が課税されることとなったのです。
 さらには、この平成12年度改正によって塞がれた贈与税スキームをクリアするため、受贈者の国籍を外国籍化するという手法(例えば孫へ財産を贈与するために、アメリカで出産し、米国籍のみを取得する)などが争われ、訴訟に発展し、またもや平成25年度の税制改正で封じ込めが行われました。
 このように踏み込んだ節税スキームと税制改正は、まさに「いたちごっこ」の状態であり、現行の法律には反していない「租税回避行為」であっても、当局との争いのリスクを含んでいるのです。

太陽光発電事業を巡る混乱

平成24年度より太陽光発電事業の固定価格買取制度がスタートし、その投資効果だけではなく、「グリーン投資減税」の施行による節税効果の魅力から、多くの法人や個人事業者の方がこの太陽光発電を行うようになりました。
 とりわけ、事業の用に供した年度に「即時償却」(かかった費用を全額損金算入可能)できる投資商品は他になく、いろいろな減価償却を活用した節税商品と比較しても、節税メリットが突出していたので、大きく利益を先延ばししたい方にとっては検討する価値の高いものになりました。
 「グリーン投資減税」の期限が2015年3月末までとされているため、今年の夏頃からは、まさに駆け込み需要で、ある種過熱したブームと呼んでもよいような状況を呈していました。私共『税務総合戦略室』にも、たくさんの太陽光発電事業に関するお問い合わせ、ご質問をいただき、そのメリットとデメリットなどの解説をさせていただいておりました。
 ところが9月下旬、このブームに冷や水を浴びせるようなニュースが突然報じられました。
 「九州電力、再生エネルギー受入れ事実上中断へ」。太陽光発電の人気が高まりすぎて申し込み事業者が急増し、すべてを受け入れた場合には電力需要を上回り、電力の供給が不安定になるというのです。その後、他の電力各社にも再生可能エネルギーの新規受け入れを中断するという動きが拡大し、太陽光発電を予定していた事業者ははしごをはずされたような状態で大きな混乱が生じています。
 原子力発電所の稼働が休止している中、電力不安は解消されておらず、自然エネルギーの推進は欠かせないと思うのですが、報道によると、この買い取り制度には最初から様々な問題があると指摘されていたようです。今回の受入れ中断は、まだ申請が受理されていない発電事業に関係するもので、すでに申請の通った案件に影響はないのですが、私共にご相談をいただき投資を進めていたお客様の中でも、制度自体に対する不信感から導入を取りやめる方が何人もいらっしゃいました。

あらゆるリスクを考慮したタックスプランニング

日々、厳しいビジネスの世界に生きておられる経営者の皆さんは、取引の中で様々なリスクを背負って経営を行っています。新しい取引先には回収不安などの信用リスクもあるでしょうし、為替や経済情勢の大きな変化が商売に影響を及ぼすこともあるでしょう。
 その上で、さらに本業とは別に節税のために考えた対策にまで、リスクを負いたくないという気持ちは大きいのではないでしょうか。
 しかし、今回述べてきたように、税コストを減少するための対策にも、実は様々なリスクが内在します。突然の税制改正により税メリットが失われる可能性がありますし、太陽光発電事業や航空機リース事業、生命保険などの投資商品においては、本当に信用に足る投資価値のあるものなのかを検討しなくてはなりません。
 私達『税務総合戦略室』は、税務の専門家として税法に関することはもちろんのこと、お客様のあらゆるリスクを考慮したうえで最適な対策案をご提示できるよう、日々様々な情報を収集し、その情報をお知らせしていかなければならないと考えています。

税務総合戦略室便り 第60号(2014年11月01日発行分)に掲載

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