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正月には将来の話~相続税特集~

第62号(2015年01月01日発行分)

執筆者6

正月は絶好の相続会議の機会

正月には親子兄弟が集まってお祝いする家庭も多い。その時に、亡くなった親の財産の相続のことを話し合ったり、あるいは、1月以降の相続から増税になるため、高齢の親の将来に備えて話し合うことも少なくないのではないだろうか。
 そこで今回は、いつもよりもスペースをもらい、相続税のことを書いてみたい。

昨年以前に亡くなった親の財産の相続

平成26年12月31日以前に亡くなった方の相続税は、改正前の相続税法で計算する。したがって、基礎控除額は5000万円に1000万円に法定相続人の数を乗じた金額を加算して求める。複数の養子がいるときの基礎控除額の計算は、実子がいるときは養子が何人いても1人とし、実施がいないときは養子の2人までとして計算する。
 この養子の数を制限する取扱いは、基礎控除額の算出の場合だけでなく、相続税の総額を算出する場合にも同じであり、今年以降に亡くなった場合の改正相続税法においても同じである。これは、過去、相続税の合法的な節税策として喧伝され、亡くなる前に大勢の孫達を養子にする手法が横行したことから改正されたものである。

15人の孫を養子に

小生も、税務署の資産税担当職員として配属されて間もない頃、実際に同じ事例に何度も遭遇している。
 その中でも、養子にした人数が一番多かった事案で15人くらいだったと記憶している。税務調査をしてはみたものの、何しろ民法上正しく養子縁組しているので手が出せない。その時に小生が思ったことは、行き過ぎた節税に対する税務署の担当者としての「憤り」も確かにあったが、それよりも、こんなことをして相続人間でトラブルの原因にならないかという心配だったことを記憶している(余計なことだろうが)。
 横道にそれたので本題に戻る。

相続開始後の節税は

相続が開始してからの節税策についてである。亡くなった後で、相続財産を隠したり、状態を変えるなどというのは、節税ではなく脱税であり論外である。だいいち、税務署に把握されるだろう。言い方を変えると、亡くなった後に財産を減らすことはできないのだ。
 では、何ができるのだろうか。農業相続や非上場会社の事業承継、あるいは医療法人の持分についての納税を猶予する制度がまず挙げられるが、一般的でないため、ここでは省略する。

土地を分筆して相続

簡単で有効な方法として、評価が安くなるような遺産分割をする方法がある。
 例えば、宅地の評価は1画地ごとに評価することになっている。被相続人である親の土地に2人の子供がそれぞれ建物を建てていて、その土地を相続する場合、それぞれの建物の敷地に分筆して相続すれば、それぞれの土地ごとに1画地として評価することになり、接道や形状から安くなる場合がある。
 このように、土地の場合は相続の仕方で評価額が変わることがあるのだ。もっとも、ただ安くするだけで合理性のない分割は、「不合理分割」として否認されるので注意が必要である。

相続財産を譲渡する際の税金を節税

分筆相続すると、その後売却した際にも次のような場合にはメリットがある。
 相続人の居住用の建物を売却した場合の譲渡所得税の計算上、3000万円の特別控除等を受けることができるのだが、土地を共有にしたままで売却すると、このケースでは、相続人の2人が自分と兄弟の居住用の用途に使用している土地ということになり、自分の共有持分のみ居住用の特例に該当し、兄弟に貸している部分は特例に該当しないことになる。

相続後に相続人が本拠地として居住

居住用の特例を受けるには、相続後、自分の所有になった以降において、自己の居住の本拠地として使用していることがポイントであるから、従前から持ち家がある相続人が親の居宅を相続後に売却した場合には、自己の居住用財産ではないので特例は適用できないことに注意が必要である。

広大地は大幅に評価が安くなる場合も

一方、共有で相続した方が有利な場合がある。それも大幅に有利に……。
 それは、「広大地」の評価制度である。これは簡単にいうと、評価する宅地がその地域における標準的な宅地の面積に比べて著しく広大な宅地で、開発行為を行うと仮定した場合に、道路や公園等の「潰れ地」が生じることから、その分を斟酌して評価する制度である。
 広大地の適用がある土地の面積には一定の決まりがあり、①市街化区域で三大都市圏においては500㎡以上、②それ以外の市街化区域においては1000㎡、③都市計画区域であっても線引きされておらず、かつ、用途地域も定められていない区域は3000㎡、④用途地域が定められている非線引き都市計画区域は①・②に準じた面積、となっている。
 また、広大地の評価ができない土地がある。マンションや大型店舗に適した状況の土地や、既に大型施設の敷地として有効利用されている土地は、広大地の評価ができないことになっている。
 ただしこれについては、例えば、大型店舗やファミレスやゴルフ練習場等の敷地として有効利用されていても、まわりに戸建住宅が連たんする住宅街に位置している場合には、その地域の標準的使用とはいえないことから、広大地に該当することになる。また、容積率が300%以上の地域も適用できない。
 他にもまだ、いろいろ決まりがあるので、詳しくは専門家に相談していただきたい。この広大地の評価は税理士にとっても難関で、ケースによっては実に悩ましいものとなる、相続税を手掛ける税理士泣かせの筆頭格である。
 広大地の評価については、税務署も調査対象とするか否かの重要な要素としている。
 税理士において、適用するに微妙な要素がある、いわばグレーゾーンに入っている場合に重要なことは、問題点・リスクをクライアントに十分に理解してもらい、共通認識をもって申告方針を決めることである。しかし、税理士によっては、税務署に否認されることを恐れて、広大地の評価を適用しないで保守的に申告をすることもあるという話をかつて聞いた。

評価を下げる専門家の出現

以前は、申告した税金を下げるときの手続きである「更正の請求」の期限が、申告期限から1年であった。そして1年を過ぎた事案に対して、以前あった申告の公示制度を利用して相続の事実を把握し、相続人に接触して、税務署にお願いしてみて評価額が下がったら……という条件で成功報酬を要求する税理士が多数いたという話である。
 願いを受けた税務署では、更正の請求の期限が徒過しているため、法的に処理をする義務はないが、調べた結果、当初の申告に大きな問題があった場合に職権により減額するということもあったようだ。

公示制度の廃止による鎮静化

その後、申告内容の公示制度が法改正により廃止され、第三者が相続を把握することが困難になったことから、そういったこともなくなったようである。

更正の請求の期限が5年になって

平成23年に、更正の請求の期限がそれまでの1年から5年に改正したことから、広大地のグレーゾーン適用について、当初申告では適用せず、後日、更正の請求をするということが少なからず出てくるのではないだろうか。税務署からみれば誠に迷惑なことだろうが、小生も税理士であり、出す側の気持ちはよく理解できる。小生もその局面になったら出すことを考えるかもしれない。
 何やらまた話が横道にそれてしまったが、広大地の適用に当たっては、税務署も含め、専門家と十分に相談していただきたいということを書きたかったのだ。脱線して申し訳ない。
 以上、紙面が尽きたので、次回以降に書き足りなかったことを書かせていただきたい。

【次回へ続く】

税務総合戦略室便り 第62号(2015年01月01日発行分)に掲載

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