税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第65号 >  元国税調査官のひとりごと 第6回 ~それぞれの事情~

元国税調査官のひとりごと 第6回 
~それぞれの事情~

第65号(2015年04月01日発行分)

伊藤 徹也

国税時代の調査エピソードを1つ話してみます。
 地元で人気の飲食店、独特の味付けで、何かの拍子に無性に食べたくなってしまう味。地元では有名な繁盛店です。
 社長は、厨房で料理を担当しており、奥様がホール係と経理、従業員も十名くらい使って、2号店3号店とお店も増えました。
 従業員に聞くと、寡黙な方だけど温厚で優しい社長だそうです。
 休憩時間従業員の方々と、たばこを吸いながら、さらに雑談をしていると面白いことが聞くことができました。
 夕方、買い物と夕飯の支度で奥様が店を離れると、社長は、従業員に必ずレジの現金有高を確認させて報告させているのです。それが遅かったり、怠ったりすると、普段見せない怖い顔で怒るのだそうです。
 奥様が店に戻ると、入れ替わりで社長が帰っていき、閉店後奥様は遅くまで書類の整理をしているそうです。
 調査は進み、社長と専務(奥様)が、二人そろって調査に立ち会うことはないのですが、気になるのか、それぞれが様子を見に顔を出してくれます。

社長の事情

そこに、何かあると思うのは調査官の性、再度休憩時間を狙ってタバコ部屋に、ドーナッツなんか差入れしちゃいました。
 ひとしきり雑談に加わり、社長の普段の行動に話が及びました。
 ドーナッツ効果てきめんでした。社長の毎日のキャバクラ通い、お気に入りの子の名前まで聞いちゃいました。
 売上除外か?個人的経費の付込みか?どうやら、社長は、店を出るときに、レジ現金を持ち出してキャバクラに行くようです。そのため、レジの現金残高を見ながら持ち出し金額を決めているようです。
 これらの事は、奥さんには内緒なので、バレ無いかと気になり、ちょくちょく見に来ていたのです。
 奥さんのいないところで、社長を問い詰めると、現金の持ち出しをあっさりと認めました。
 しかし、社長の話による持ち出した金額では、決算とつじつまが合わないのです。他にもあるのではないかと聞いてみても、社長は、絶対それだけしか持ち出していないとおっしゃっています。
 もう一度、決算の状況を分析しました。
 売上原価率がバラバラで、相対的に高い。販管費も、年によって変動が大きく、営業利益が薄い。
 何で、変わらない業務体制なのに、年によって原価率、経費の科目別割合がこんなに違うのだろう?
 社長が売上除外は認めているが、それを鑑みてもおかしい。

専務の事情

経理をしている専務(奥様)がちょくちょく調査を覗きに来ていたことを思い出しました。
 経費の領収書を見てみると???ビンゴでした、7の数字の線の太さが途中から違うぞ、たったの伝票2冊購入で、7千円は高いよね。1を7に書き換えていました。
 よく見てみると、他にも出てくる、出てくる、1を7や9に、3を8書き換えています。この辺はまだわかるけど5を8に、ひどいときは、4を8にだって……どう考えても苦しいですよね。
 今度は、ご主人のいないところで、奥さんにも事情を聞いてみると、どうやら、その日の売上を見ながら、適当に領収書の数字を書きかえて、その金額を持ち出していたそうです。使い道は絶対に内緒だそうです。
 調査の終わりに際して、社長も専務(奥様)も口をそろえて言うのは、「悪いことしていたとは思うけど、こんなに忙しいのに、何でうちの店は儲からないのだろう」と……私、心の中では、「そりゃ二人して、これだけ、やりたい放題していれば儲かるものも……」でもそれは言えない。
 社長と専務(奥様)、それぞれに、相手のしたことは言わないで調査を終わることが、いかに難しかったか、想像してみてください。

税務総合戦略室便り 第65号(2015年04月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP