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元国税調査官のひとりごと 第7回 
~マスコミ報道~

category: 税務調査
第66号(2015年05月01日発行分)

伊藤 徹也

マスコミ報道される脱税事件等には、様々なものがありますが、そもそも税務調査は、世間に知られることもなく粛々と行われるはずなのに、なぜ、マスコミに報道されるのでしょうか。
 そんな疑問を持ったことがある方は少なくないのではないでしょうか。
 そのたびに、「何か特別な事情があって、マスコミには税務調査があったこと、その結果が情報として流れる仕組みになっている」と思い、納得している方もいるかもしれません。
 告発されて脱税事件となればそういったこともあるかもしれませんが、中には、国税局や、税務署による税務調査で、修正申告、納税までしているのに、それが報道されることがあります。
 これは誰がどのような形でマスコミに情報を流しているのでしょうか。
 国税局の広報などが情報を公開している?
 そんなことはないと思います。
 そもそも国税局や、税務署の職員は、国家公務員ですので、厳格な守秘義務を課せられています。
 そこで、「何月何日、○○会社に税務調査が入り、売上除外5000万円が発覚し、修正申告をしたが、追徴税額1300万円と重加算税450万円が課せられた」などという情報を流したら、守秘義務違反になり懲戒処分されるべきことです。
 どうも、報道される内容の大半は、報道された本人や関係者が話しているようです。
 きっかけは、それぞれの記者の情報網によるところは多いのでしょうが、例えば、そこに働く従業員の方、調査の際に反面調査された取引先の方などへの取材により、税務調査があったという情報を得て、社長さんに直接取材をして情報を得るといったことが多いようです。
 まだ国税にいた当時、調査の後半に、社長から、「今回のことは、新聞報道されたりしませんよねえ。」と聞かれることがありましたが、そのたびに、「私たち担当者は、絶対に情報を漏らすことはありません。それよりも、社内の方や取引先の方など関係者から情報が漏れることがよくあるようですので、気を付けた方がいいと思います」と説明していました。
 マスコミ報道の中身を見ますと、見出しや本文によく出てくる言葉として、「脱税」「所得隠し」「申告漏れ」「見解の相違」などがありますが、それぞれの言葉の意味は使う人によって微妙に違いがあるようです。
 「脱税」本来犯罪用語で、裁判で税法違反の判決が下ったものを指しますので新聞などで「脱税」と表現されるのは、起訴されたものだけなのですが、なかには、そうでないものにも使われていたりしているようです。
 「所得隠し」「申告漏れ」は微妙な表現ですが、悪質な課税逃れ、「仮装隠ぺい」がなされたものを「所得隠し」、その他単なる申告ミスなどを「申告漏れ」と表現されていると思いますが、これも、発表記事をみただけでは、判断が困難な場合も多いようです。
「見解の相違」は、色々な意味で使われるようです。
「見解の相違はありましたが、税務当局の指示に従い修正しました」といったコメントがよくなされますが、その真意はいろいろあるようです。

  • 済んだことなので、「見解の相違」という言葉でさっさと終わらせたい。
  • 内容を詳しくコメントしたくないので、過去の事例をまねてとりあえずこう答えておくのが無難な気がする。
  • 見解の相違があって本来争うべきではあるが、その労力や、税務当局の心証を考えて見解の相違という言葉で納得することにした。

等々、便利な言葉のように受け取れますが、何か言い訳がましく聞こえ、やはり脱税していたのではという憶測を呼ぶことにもなっているのではないでしょうか。
 脱税から申告漏れまで何でも報道されてしまう時代です。
 報道が避けられないとしても、いわゆる風評被害を受けることは避けたいものです。

税務総合戦略室便り 第66号(2015年05月01日発行分)に掲載

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