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法人から個人への資金の転移

category: 法人税所得税
第66号(2015年05月01日発行分)

その他

1 所得税率と法人税率

                

現在日本では、法人税率を下げ、個人の所得税率を上げる傾向にあります。
 日本の法人税率は、現状、実効税率で約35%(地方税含む)ですが、安倍首相も明言しているとおり、最終的には20%台まで引き下げることが予想されます。一方、所得税は累進税率であり、最高税率55%(住民税含む)の負担となっていますので、法人税の実効税率と所得税の最高税率とのかい離は、今後より大きくなっていくものと考えられます。
 したがって、企業のオーナーのように、比較的、高額な報酬の支給を受けている方は、会社に留保する金額と支給を受ける役員報酬との配分バランスを考慮する必要があります。
 つまり、法人税を節税したいがために、やみくもに役員報酬を増額すると、法人税の節税額以上の所得税を納めることになってしまいます。
 ちなみに、所得税の場合、課税所得金額が1800万円を超えると税率50%となりますので、高税率となる基準が意外と低いと感じるのではないでしょうか。
 これらの点を考慮すると、現状、節税という点では、報酬の金額にもよりますが、中小企業の場合、同族会社の留保金課税もありませんので、利益を法人に留保しておいた方が有利なケースが多いと思います。しかし、利益を会社に留保する事は自社株の評価額の上昇にもつながりますので、効率的に法人から個人に資金を移動する方法を検討する必要があります。

2 法人から個人への資金の移動方法

                

一般的に法人から個人への資金の移動方法として、どのような方法が考えられるのか検討してみたいと思います。

①役員報酬として支給

一番シンプルな方法ですが、総合課税として累進税率となりますので、報酬の取りすぎは所得税の大きな負担が生じます。したがって、一般的には、親族に勤務してもらい、所得を分散する方法等が考えられます。

②退職金として支給

退職金の課税所得計算は優遇されているため、報酬として支給を受けるよりも税務面では有利です。したがって、退職金の支給は有効な方法となりますが、何度も支給を受けることができない点や退職することにより会社への影響力が無くなる等のデメリットが生じます。

③配当(非上場株式)による支給

配当(非上場株式)も報酬と同様総合課税の対象となりますので、累進税率が適用されますが、配当控除により一定の金額を控除できます。法人側のデメリットとして、配当の支払いは損金算入できない点が挙げられます。

④会社からの借入

会社からの資金借入の場合は、所得税の課税対象にはなりませんが、借入となりますので、最終的に会社に返済しなければなりません。また、借入期間中は適正な利息を会社に支払う必要があります。会社側の処理としては代表者貸付金となるため、一般的に銀行借り入れの点で懸念材料となる可能性もあります。

⑤利子による支給

これまで、節税対策のスキームとして、少人数私募債が利用されることがありました。これは、会社が発行した社債を代表者等が引き受け、代表者が社債利息を収受するという方法です。このスキームのポイントは、社債利息による利子所得が源泉分離課税(20%)で課税関係が終了するため、高税率の富裕層にとっては、それなりの節税対策となっていました。しかし、税制改正により平成28年1月1日以降に発行される社債からは、当該利息については総合課税となります。

⑥保険の利用

これは、少し違った観点からの資金移動方法ですが、法人で加入した逓増定期保険等を個人の契約に変換し、個人として解約返戻金のピーク時に一時所得として受け取るというスキームです。

一時所得の場合、課税所得が2分の1となるため、一定の節税効果が生じます。ただし、中途で法人契約から個人契約に契約者の名義を変換するため、その点について経済合理性を説明できるようにしておいた方がいいでしょう。

税務総合戦略室便り 第66号(2015年05月01日発行分)に掲載

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