不正計算により資金を捻出するわけですから、その使途目的によっては残ったり残らなかったりということになります。不正してまで資金を捻出する目的は①個人の費消のため②個人の蓄財のため③取引先へのバックのため④受注工作資金のためなどといったところになります。
個人蓄財にもいろいろな形態があります。預金・証券、動産・不動産、現金などになります。
預金・証券の場合、どこの銀行・証券会社と取引しているかが分かればいいわけです。
不正資金をプールするわけですから申告書の勘定科目内訳書に記載のある銀行(公表銀行)であるわけないですよね。
もし、公表銀行であれば仮名借名預金ということになります。マネーロンダリングの関係上からも仮名借名預金はなくなっているはずですが……。
では、公表銀行以外の取引銀行を何から探し出すか。会社事務所内を隈なく見渡して、公表外銀行の名前があるもの、例えばカレンダーとかがないか。会社の近隣に公表外銀行があれば、昼食時間に照会文書を持っていき、取引があれば預金の復元をします。
会社と自宅が別であれば通勤経路を聞き、その経路にある金融機関へ照会して預金復元をする。よく出かける地域はといった具合に可能性のある所にローラー大作戦となります。下手な鉄砲数撃ちゃ当たる方式というわけです。結構、売上除外した資金をプールした預金が把握されたりするんですよ。
また、預金に小切手の取立などがあれば、振出人へ反面調査し、その他にも支払いがあれば銀行調査により取立銀行、預金を把握します。売上除外が把握されれば、書類は破棄されている可能性は高いですが取引先には存在していますから反面調査と銀行調査を繰り返し実施して金額を確定させていきます。
さきほど、ローラー作戦といいましたがその範囲は狭いです。東京都内の企業で、都内以外に支店営業所を有せず、代表者居宅も会社と同住所とした場合に静岡に預金があるとは考えませんよね。
ですので、すべて網羅できないのですが、そこは全国に情報を持っている組織ですから、今はわからなくても何年後にはわかることになる可能性はあります。資産化=情報となるでしょう。預金証券不動産など預金者、購入者などは住所と氏名が明確になるわけですので何らか手がかりが残ることになります。
マイナンバー制度が導入されるにあたり、預金口座もリンクさせるようなことが考えられています。そうなると仮名や借名といった預金などは皆無になり、労せずに預金を把握できるようになるのではないでしょうか。
不動産の場合は登記があります。土地、建物、船舶といったところは登記事項などから資料情報としてあります。動産、特に自動車ですね。この場合は車検があり所有者、使用者が判明します。販売先からの資料情報がでてきますね。
現金は大丈夫とお思いでしょうか。確かにお金のことをお足といい、現金ですと足がつかないので、捜しにくいですね。
しかし、査察事案などは現金を段ボール箱に入れて押し入れに保管していたパターンが見つかっています。
では、国内だからバレると思い、いっそ海外に持っていけば分らないだろうということで、資金の海外流出が増えているようです。海外だから安心と高をくくってはいけません。
近年、特に如実に表れているように感じます。確かに、海外ということになると把握しきれないことはあるでしょう。そこを補足するため、金融機関を介して送金すると一回の送金額が100万円以上は送金資料として国税当局に資料化されています。その資料が蓄積されているわけです。
また、今後は国外に有する資産の報告義務を課したり、外国の金融機関からの情報を得たり、他国の税務当局との連携を強化するなど、資産等の海外移転の把握に余念はありません。したがって、絶対に大丈夫ということはないのではないかと思います。
査察事案を除く、税務調査は時にラッキー、アンラッキーによることがありましたが、今後はそうではなくなる時代に突入するでしょう。
(次号につづく)
税務総合戦略室便り 第67号(2015年06月01日発行分)に掲載
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