法人が本業とは別に、収益物件不動産を保有し、毎期継続的な収入を得ることがあると思います。このような補完的な収入は、企業を維持していくための重要なキャッシュフローの一助となります。
そこで、今回は法人が不動産を保有・賃貸し、最終的に売却するまでの間の法人税及び消費税等についてのポイントを解説したいと思います。
法人税の節税の観点からは、減価償却費を多額に計上できるかどうかが重要です。
したがって、契約上、土地と建物の金額の比率が重要になります。
契約相手の事情もありますので、取得者側で自由に決定することはできないかもしれませんが、極力、建物の比率を大きくすることがポイントです。
また、建物の比率を大きくすることは、減価償却の面だけでなく、消費税の面でも、仕入控除金額が大きくなるため有効です。
早期償却という点では、耐用年数も大きく影響してきますが、中古物件を購入する場合、耐用年数の簡便計算方法を採用することにより、木造住宅であれば、最短4年で減価償却する事も可能となります。
購入に際しての不動産取得税や登録免許税は、不動産の取得価額に含めず、一時の費用として損金算入できますが、仲介手数料等は取得原価に含める必要があります。
消費税の観点からは、購入物件は居住用賃貸よりテナント(事業用)賃貸の方が有利です。
建物購入の際、多額の消費税を支払っていますので、消費税の申告の際には、原則、当該支払消費税を控除する事ができるのですが、居住用賃貸の場合は、その後の賃料収入が非課税取引に該当することにより、物件購入時の支払い消費税の控除額が制限されるためです。
賃料収入を収益計上するとともに、減価償却費、固定資産税、修繕費、管理費、支払利息等が損金計上可能です。
話はそれますが、不動産を保有することで、このように多額の費用負担が必要になってきますので、節税対策の一つとして、企業オーナーが自宅を会社に保有させるという方法もよく見受けられます。
個人で自宅を購入する場合には、必要経費にできない上記費用を法人保有とした場合は、損金計上できるためです。この場合、オーナーは、会社に賃借料を支払う必要がありますが、その基準が世間相場より相当低いため、非常に有利です。
消費税の観点からは、取得時と同様、居住用賃貸よりテナント(事業用)賃貸の方が有利です。居住用賃貸収入は非課税収入のため、課税売上割合が減少し、仕入税額控除の金額が減少することにつながるためです。
売却時は、売却益に対して法人税が課税されますが、完全支配関係があるグループ法人に対する売却の場合、原則、グループ税制の適用により売却益に対する課税が繰り延べられることになります。逆に売却損が生じた場合には損金計上ができません。
また、売却益が多額になる場合は特定資産の買換えによる圧縮記帳の制度があります。新たな資産を取得する必要があることや譲渡資産の保有期間10年超等の諸々の条件がありますが、売却益の繰延が可能となりますので一考の価値があると思います。
売却時の消費税は、購入時の場合と異なり、建物の比率が小さい方が、課税売上が減少するため、税務上は有利です。
また、土地の売却金額が大きくなると、課税売上割合が減少するため、仕入税額控除の金額が小さくなることがあります。
しかし、土地の譲渡が単発なものであり、かつ、その土地の譲渡がなかったとした場合には、事業の実態に変動がないと認められる場合には、「課税売上割合に準ずる割合の承認申請」を行うことにより、高い課税売上割合で消費税の計算を行うことができます。
しかし、一定の要件を満たしている事や税務署の事前承認が必要となりますので、詳細についてはご相談頂ければと思います。
税務総合戦略室便り 第67号(2015年06月01日発行分)に掲載
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