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いよいよ出国税の施行

第67号(2015年06月01日発行分)

執筆者3

「富裕層の日本出国時に、株式等の含み益に課税する」という〝出国税〟が27年度税制改正で創設されたのは記憶に新しいところです。
 この法律が施行される本年7月1日以降は、「出国し、非居住者となる」ことによって有価証券譲渡益(キャピタルゲイン)課税を回避するという税金対策は埋められてしまいます。施行は目前です。
 そこで、この出国税とは何なのか?を見直してみたい。

1 出国税とは

国外転出(国内に住所又は居所を有しないこととなることをいう)をする居住者が、有価証券等又は未決済デリバティブ取引等を有する場合には、〝国外転出〟の時(=非居住者となる時)に譲渡したものとみなして、その含み益に対して課税するという税制です。
 前段の〝国外転出をする居住者〟という要件については、非居住者となる出国とそれ以外の出国とどのように峻別するのか?その手段・方法が気になるところです。
 後段で何故、出国税の課税対象財産を「有価証券等」に限っているのかというと……ここが重要なポイントなので詳しく説明します。
 現行の、日本における(国内に恒久的施設を有しない)非居住者の株式等譲渡益に対する課税は、(イ)事業譲渡類似株式や(ロ)不動産化体株式などの一定の株式の譲渡に限られていることが主たる原因です。つまり、日本の株式(上場・非上場)の譲渡であっても、日本を出国した〝非居住者〟の株式譲渡益に対しては、原則として課税はされないのです(原則は、居住地国で課税される)。
 更に、租税条約の問題(影響)もあります。相手国によっては、二重課税防止のため、(イ)や(ロ)も免税となる場合があるのです。
 このため、〝日本を脱出〟し、香港やシンガポールなど譲渡益(キャピタルゲイン)課税のない国の居住者となった後に、株式を売却してしまう事例が後を絶たず、課税上の問題とされてきました。
 ユニマット事件を思い起こしてください。だから、出国税の対象となる資産は株式等なのです。
 出国税の執行にあたっては、次の平成26年度税制改正事項も名脇役となっています。国境を越えて有価証券の証券口座間の移管を行った場合に、調書の提出を義務付ける〝国外証券移管等調書制度〟が26年度に創設されました。
 この制度により、『その有する有価証券の国外証券移管等の依頼をする者は、その者の氏名又は名称及び住所等を記載した〝告知書〟を、その国外証券移管等の依頼をする際に、金融商品取引業者等の営業所等の長に対し提出しなければならない。』ことになりました。証券の電子化も寄与していますが、証券会社で管理・保管される上場有価証券を勝手に海外へ持ち出すことは、不可能だったのです。

2 出国税の対象者

出国税の課税対象者は、次の(イ)及び(ロ)の要件を満たす居住者となります。
(イ)上記の有価証券等の出国時の評価額の合計額が1億円以上である者。
(ロ)国外転出の日前10年以内に、国内に住所又は居所を有していた期間の合計が5年超である者。
 先ず、(イ)の要件、出国時の評価額の合計額が1億円以上である者というと、小企業のオーナー経営者(必ずしも富裕層ではない)も、所有する非上場株式の評価額は、1億円以上となってしまい、出国税の対象者になってしまうケースは多いですネ?
 次に、(ロ)の要件では、居住者のうち10年以内の間に5年超の居住期間がなければ、外国籍の者(非永住者)に限らず、居住者であっても出国税は課税されないと読めます。
 外国での勤務期間が長くストックオプションを外国企業から付与されている者が頭に浮かびます。
 個人がグローバルにビジネス(職業)を展開し、海外でも財産形成をおこなえる昨今、(ロ)の要件に該当しない日本国籍のある居住者っていますよネ。
 そう言えば、就業ビザで滞在する多くの外国人も出国税の対象とはなっていません。

税務総合戦略室便り 第67号(2015年06月01日発行分)に掲載

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