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元国税調査官のひとりごと 第9回 
怖い経験

第68号(2015年07月01日発行分)

伊藤 徹也

暑い時期になってきましたので、少し怖い話をして涼んでいただこうかと思います。
ある風俗店グループの話しです。
 グループの事務所は、自社ビルに集まっていました。4名で向かったのですが、階段が各フロアを横断しないと次の階に昇れない作りになっていました。
 一階には、にこやかな受付の方がいるのですが、二階からは雰囲気が一変、いかつい人たちが、じわじわと近寄ってくるのです。ドラマでよく見かけるシーンのようです。
 素知らぬ顔で通り抜けるのですが、少し距離を置いてついてきます。
最上階についたころには、後ろに10名以上の人がついてきていました。
 この時点で、もう生きた心地はしていなくて、何事もなく、無事に帰ることが想像できなくなっていました。
 最上階で、グループの金庫番といわれる役員に面接(グループのトップは中々表には出てこないのですが)ここまで来てやっと、取り巻きは戻っていきましたが、この役員も一癖も二癖もある感じで、引き続き緊張感のある時間が続きます。
 気持ちが圧されているので自分が落ち着くまでは、仕事の話は一切しませんでした。
 世間話や、業界の話、そんな時間が10分くらい続いたでしょうか。
 それがかえって「何か掴まれている」と思うような効果をもたらしたのか、痺れを切らしたのか、向こうから、切り出してきました。

  • 金庫番 ところで、今回は、どれくらいのつもりなんだ?」
  • A「まだやらせてもらってないのでなんとも、とりあえずやらせてください。」
  • 金庫番 「わかった、店に連絡入れとくから……で、どんな感じなんだ?」
  • A 「どんなもんなんですかね?」
  • 金庫番 「……まあ、0・2本」
  • A 「いつから」
  • 金庫番 「3年」
  • A 「年1本ですね?」
  • 金庫番 「無茶苦茶言うなあ、話にならんわ」
  • A 「じゃあ、間くらいかな?」
  • 金庫番 「……いっぺん話とくわ、でもあんまり無茶言ったらあかんで、月夜の晩ばかりじゃないんやから、がははは、これ冗談やけどな」
  • A 「……じゃあかからせてもらいますね、それから話しましょう。」

ちょっと何の話か分かりませんよね、ちょっと翻訳しますね。

  • 金庫番 「今回はいくらぐらい追徴するつもりなのか」
  • A 「まだ始めていない内からわからないですよ、まずは協力をしてください」
  • 金庫番 「解った協力する。店舗の責任者にも協力するように言っておくから、始めてもらっていい、ところで本音のところ、いくらくらい追徴するつもりなのか」
  • A 「本当にまだわからないですよ、逆に伺いますが、いくらぐらい漏らしているのですか」
  • 金庫番 「年間2千万円くらい、3年間で、6千万円」というところかな。
  • A 「あなたが年間2千万円というということは、大体年間1億円ぐらい漏れているのですね。あなた方の話は半値八掛け五割引きで聞かないといけないから。」
  • 金庫番 「いい加減にしろよ、そんなに漏らしているわけがないだろ、ふっかけるにも程がある。」
  • A 「まあその間の6千万円くらいなのでしょうかね。」
  • 金庫番 「……オーナーにも伝えてみるが、あんまりふっかけるもんじゃないよ、あなた、月明りで明るい日ばかりじゃないんだから、暗い夜道を歩くときには周りに気をつけなさいよ……いやこれは冗談だけどね。」
  • A 「では店舗のほか、関係個所を見せてもらいます。その上で、結果は、改めて話しましょう」

こんな感じの会話があったりするのです。
 ここから、各店舗を含め、関係個所を確認するのですが、私たちは、そんなところに行くのは慣れているから、怖がっていないと思われているかもしれませんが、全然そんなことはないのです。
 実際、14・5人に囲まれたときや、「月夜の晩ばかりじゃ……」のくだりでは、本当に背筋がゾクゾクしました。
 怖い話といっても怪談話というわけではありませんが、すこしは涼しんでいただける話だったのではないでしょうか。

税務総合戦略室便り 第68号(2015年07月01日発行分)に掲載

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