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出国税の導入と今後の方向性

第68号(2015年07月01日発行分)

その他

1 出国税とは

以前にも本コラムで解説させて頂きましたが、今年の7月1日から出国税が導入されることになりました。
 出国税とは、居住者が海外移住等のために海外に出国する際、その時点で保有している有価証券等の時価の金額の合計額が一億円を超える場合には、その有価証券を出国時に時価で譲渡したものとみなして、所得税が課税されるという制度です。
 これまでは、居住者がシンガポール等のキャピタルゲインに課税しない国に移住することによって、有価証券の含み益課税を回避するというスキームが散見されていましたが、これらの租税回避を防止するために導入されました。
 しかし、今回の制度は、海外移住する際に、租税回避の意思(海外で有価証券を売却する意思)がない場合であっても、原則、保有有価証券時価一億円超の形式基準により課税されますので、富裕層にとっては、海外移住自体を躊躇するケースも出てくるものと考えられます。
 例外として、一定期間の間に日本に戻ってくる意思があれば、納税を猶予する制度もありますが、この場合であっても、申告の義務や税額相当の担保を提供しなければならないため、非常に面倒な制度となっています。
 このようなこともあり、6月までに日本を脱出しようとしている富裕層が多く存在しているという報道も見受けられます。

2 今後の方向性

出国税の導入により、一定の富裕層は、海外移住による有価証券売却スキームは利用しにくい状況になりますが、有価証券売却益は申告分離課税(20%)となっており、比較的所得金額が大きい富裕層にとっては、総合課税(累進税率)より優遇されています。
 したがって、「20%課税ならやむなし」と割り切りきって考えることもできるかもしれませんが、可能な対策があれば講じておきたいところです。

①自社株の事前対策

出国税の対象となる有価証券には、投資用の株式だけでなく、オーナー社長が保有している自社株も当然含まれます。 上述しましたように、今後はオーナー社長が海外に移住する際は、たとえ租税回避の意思がない場合であっても、自社株の含み益に課税されるケースが生じます。
 そこで、海外移住を考えているオーナー社長は、自社株の評価を下げ、出国時までに保有有価証券の時価を最少化しておくことが重要です。しかし、含み益が多額に生じている場合は、退職金の支給や航空機リース等により、株価引下げ対策を行い、有価証券の時価を引き下げるにしても限界があります。
 したがって、今後、このようなオーナー社長は、上述した一時的な株価引下げ対策も必要ですが、日本に滞在している間に、長期的な視点で自社株承継対策を少しでも進めておいた方がいいでしょう。

②投資対象の変更

売却時は、売却益に対して法人税が課税されますが、完全支配関係があるグループ法人に対する売却の場合、出国税の対象となる資産は、株式や債券、ファンド、未決済デリヴァティブ等の有価証券等が該当し、これら以外の資産であれば、時価一億円以上保有している場合であっても出国税の対象にはなりません。
 したがって、海外移住を将来的に考えている富裕層にとって、今後は有価証券等ではなく不動産等が投資対象として効果的であると考えます。この場合、税務的な視点からは、国内不動産ではなく国外不動産を保有することが好ましいと言えます。
 国内不動産の場合、将来的に海外移住し、売却時に非居住者の状況であったとしても、キャピタルゲインに対して、日本で課税されるためです。
 一方、国外不動産を売却した場合は、その時点でその者が日本の非居住者であれば、日本で課税されることはありません。さらに、キャピタルゲインに課税しない国や税率が低い国の不動産を保有すれば、より税メリットを享受する事ができます。
 また、震災・原発・円リスク等も考慮した場合、早めに保有資産を国内資産から国外資産に変更しておくことは、税メリット以外の点でも一考の価値があると思います。

税務総合戦略室便り 第68号(2015年07月01日発行分)に掲載

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