税務総合戦略室便り

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税よもやま話 第二十七回 
申告是認

第70号(2015年09月01日発行分)
元国税調査官・税理士
松井 孝榮

国税通則法の改正で、実地調査の結果、調査した全ての税目および課税期間の中に非違が認められなかった税目や課税期間がある場合には、「更正決定等をすべきと認められない旨の通知」(申告是認通知書)を送付することとなっています。

 税務署の調査事案は署管内の数多くの法人の中から統括官が選定し、調査官の技量に応じて割り当てられていきます。
 ベテラン統括官が選んだ調査事案ですので、調査指令を受けた調査官は何らかの実績を挙げようと頑張ります。できれば申告是認という最悪の事態は避けたいと。
 税務調査は「正直に申告している者は稀で、大半の者が税金を少なく申告している」という性悪説を基本として実施されている面が見受けられます。税務調査を受けた経験がおありの方であれば、これらが申告是認が極めて稀であることの理由であると十分にご理解いただけることと思います。

申告是認の条件とは

法人に対する税務調査は、法人税・消費税・源泉所得税という3つの税金が同時に調査されるのが普通です。最近の調査では、同時に印紙税の調査も実施されます。
 この四税目の調査をクリアして初めて真の申告是認となりますが、四税目の申告是認は極めて困難な事業になります。
 しかしながら、納税者自身が適切な納税意識を持ち、税理士も適切な税務申告を支援していれば申告是認を勝ち取る可能性は高まることになります。

ある申告是認事案

ある日学習塾を経営する顧問先に税務調査の連絡が入りました。
 都内某署の上席調査官が調査を担当するとのことであり、後日調査資料の準備と事前打合せのために会社を訪問することといたしました。
 代表者は執筆活動もされているその分野では著名な女性でした。
 会計帳簿、請求書、領収書等の証拠書類等も綺麗に整備されており、申告水準もきわめて高く、事前点検した結果特に問題はないと判断することができました。
 ただ法人設立以来初めての税務調査であり、社長さんは調査に対し一抹の不安を抱いているようにお見受けいたしました。
 初日の調査は順調に進みましたが、二日目に社長さんの執筆活動に伴う印税収入の計上もれを示唆してきました。
 その後、上席調査官は社長さんの了承を得たうえで出版会社への反面調査を実施し、一か月後に再び調査内容を説明に来社しました。
 「出版会社と御社との間で交わされた契約書には初版分の作成部数と配送日が記載されております。初版分の売上金額は調査期において計上すべきではないですか。署の審理担当者も同様の意見です。」と社長さんに詰め寄りました。
 社長さんもいささか疲れた様子で、修正に応じる気配を見せはじめました。
(しめた。申告是認のチャンス到来。税理士の出番。)
 「ちょっとお待ちください。当社は出版社からの支払通知を受取って初めて収入金額を認識することができます。当社は従来から継続して通知・入金をもって収益計上しています。印税収入は出版会社からの通知によって収益計上するのが一般的だとおもいますが、如何ですか。私どもとしましてはこの問題について修正申告する必要は認めていません。」(上席には気の毒でしたが) 
 一週間後、申告是認通知書を発送する旨の電話連絡がありました。

 私どもの調査立会は申告是認を目的としているわけでもありません。
 税務当局の調査に対し「無理が通れば道理引っ込む」のようなスタンスも感心しません。(当局にもプライドがあります。逆効果を招く危険があります。)
 社長さんの調査に対するフラストレーションを少しでも和らげ、調査結果のソフトランディングを目指すことが税理士の一つの仕事であると考えています。
 租税法律主義に則り、クライアントの信頼にこたえ、納税義務の適正な実現を図っていきたいと思っています。
 クライアントの皆様が適切な納税意識をお持ちになり、適切な税務申告に理解を持っているのならば、税務調査におけるストレスフリーを実現するために最大限の努力をする所存です。

税務総合戦略室便り 第70号(2015年09月01日発行分)に掲載

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