税務総合戦略室便り

HOME >  税務総合戦略室便り >  第70号 >  「持分なし医療法人」への移行と税負担(第2回)

「持分なし医療法人」への移行と税負担(第2回)

第70号(2015年09月01日発行分)

執筆者3

「〝移行〟という言葉を一度は聞いたことはあるけれど、放っておいたヨ」というお医者様も大勢いらっしゃるかと思います。とは言え、この機会に改めて①移行しない場合と②移行する場合の税負担の違いを比較検討してみてはどうですか? ここが、今回のテーマの結論であり、財産を承継する家族にとっては大事なことです。

  • ①このまま、出資持分のある医療法人であり続ける→移行しない場合は、今後の相続対策によってどこまで相続時の税負担軽減が可能なのか?
  • ②一方、持分なしに移行する場合、移行時に医療法人の負担する贈与税額はどの位かかるのか? 仮に、医療法人に持分の評価を下げるための〝株価対策〟を予め施した後に移行すると、どこまで贈与税の負担額は下がるのか?
    そして、その効果として、相続時の税 負担額はどれほど軽減されるのか?
    という2項間の比較です。大事な財産を守るために必須となります。

その前に、事前知識として、1.国全体としてどの位の数の医療法人が移行済みであるのか、2.移行のメリットとは何か、3.移行する際の〝注意ポイント〟は何か……を厚生労働省の資料から追ってみたいと思います。

1 医療法人数の推移からみた移行

厚生労働省が調べた「医療法人数の推移」を見ると、医療法が改正された平成19年以降、平成20年3月末時点の調査では、〝持分あり〟社団法人は4万3638件あったのが、26年3月末時点では4万1476件となっており、この6年間に〝持分なし〟に移行したと思われる法人数は、最大限で〝持分あり〟法人の5%弱にしか過ぎません。移行への手続きが複雑であったとはいえ、何故、これ程までに移行が遅々として進まなかったのか?疑問ですヨネ。

2 移行メリット

今回公表された『「持分なし医療法人」への移行に関する手引書』では、26年10月1日からの3年間に限って受けられる、移行時における特典制度「医療法人の持分に係る相続税・贈与税の納税猶予及び免除制度」の内容や諸手続きを紹介しています。
 この、お医者さんにとっての〝事業承継税制〟とも言える特典制度の適用による第一のメリットは、厚生労働省に移行計画の申請をおこない、〝認定医療法人〟として認定を受けると、たとえ移行段階であっても、医療法人の持分に係る相続税・贈与税の納税猶予や免除を受けられる点にあります(ただし、移行しなかったときには、精算され、課税されます)。
 But、〝持分なし〟への移行とは、出資者全員が、そろって持分を放棄し、出資持分のない医療法人に移行することを言うのであって、仮に出資者の中から移行に反対する者が現れ、持分の放棄に応じないとなると、結果として、移行できないということになります。

3 要注意ポイント

出資持分のない医療法人に移行する際の〝注意ポイント〟に、次の3点が揚げられます。

  • ①出資持分を放棄し、払戻しを受けない場合、その行為が相続税法66条4項(相続税の不当減少要件)に該当する場合には、医療法人を個人とみなして、相続税法上の時価により医療法人が贈与を受けたものとして取り扱われ、医療法人に贈与税が課税される。
  • ②出資持分の払戻しを受けた場合であっても、払込み金額以下であれば「みなし配当」課税されない。
  • ③贈与税の納税猶予の適用には、出資者が持分放棄する時には、厚生労働省の認定する〝認定医療法人〟であることが要件となっている。

このうち、特に①のクリアが難関ですね。ここをクリアできないと、個人から医療法人への出資持分の贈与に対する課税(贈与税)が発生します。
 個人ではなく医療法人が負担する税金とは言え、ファミリーで経営する法人にあっては、個人も法人も一体=財布は一緒ですから……負担になります。
 負担が重いと、移行を断念せざるを得ません。では、要注意ポイント①の相続税法66条4項に規定された、(相続税の不当減少要件)とは何か?そして、どうしたらクリアできるのか?については、次回にお話します。

(次号につづく)

税務総合戦略室便り 第70号(2015年09月01日発行分)に掲載

お電話でのご相談・お申込み・お問い合わせ

全国対応いたします。お気軽にお問い合わせください。

03-5354-5222

PAGE TOP