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成功者になるための法則その19 
2代目社長の作り方、育て方

第70号(2015年09月01日発行分)
エヌエムシイ税理士法人 会長・税理士
野本 明伯

放っておいても社長にはならない

私どもエヌエムシイ税理士法人は2015年6月から、私野本明伯に代わる新しい代表社員、佐藤修一を迎えました。私のもとで27年間、一緒に仕事をしてきた優秀な人間です。
 みなさんは「代表社員」と聞いても正直ピンと来ないかもしれません。税理士法人の代表社員は、株式会社の代表取締役社長と同じです。つまり経営者です。その職責が、創業者である私から佐藤修一にバトンタッチされたのです。
 私もそうですが、創業社長というのはゼロからスタートし、容赦ない競争にもまれつつ、正に生きるか死ぬかの荒波をいくつも乗り越えて、現在の会社を築き上げてきたのです。その創業社長が退くときには必ず新しい2代目社長が登場するわけですが、そこで業績が停滞してしまう中小企業は少なくないと言われます。
 しかしそれは、ある程度は仕方のないことだと思います。創業社長と2代目社長の能力の差は、10倍以上もあるでしょう。2代目社長は創業者の真似は絶対にできません。だから、2代目社長は創業社長とは違った形で、しっかりと会社を経営していけばよいのです。
 ただし、そのためには2代目社長自身の変革が必要です。経営者としての視点、考え方、発想を持ち、社員やお客様からの厚い信頼を獲得しなければいけません。
 創業社長自身が歩んできたように「思うままにやればいい」と放っておいたら、そのような2代目社長の変革は決して実現しないでしょう。
 どうしたらよいのでしょうか。
 私自身も代表社員の引き継ぎは初めてですから、いろいろなことを考えました。そして、いま一つのことを実行しています。
 今回は一つの参考事例として、当エヌエムシイ税理士法人における新2代目代表社員のチャレンジを紹介することにしましょう。

新2代目は社長らしくないのが当然

6月から就任した佐藤修一新代表社員は、当初たいへんなプレッシャーがあったと思います。与えられた役職を全うしようと頑張っていました。その一生懸命さは、傍から見ていてはっきり感じられました。
 しかしその姿は、かつて同僚や部下だった職員たちにどのように映っていたのでしょう。やはり、とても代表社員には見えないわけです。
 「頑張っているけど佐藤さんは佐藤さんのまま。何も変わってない」
 そう見えてしまうのです。
 しかしこれは、当然のことです。代表社員に就任したとたん、創業者の私と同じようなカリスマ性を発揮しろと言うほうが無茶です。
 本人は考えたことでしょう。
 「今後は代表社員としての意識を持って、みんなを引っ張っていこう」
 しかし、長いあいだ私の部下としてやってきたわけですから、辞令を受けたとたんに意識や考え方をまったく違う立場に変えるなどということは不可能なのです。指揮の仕方、言葉づかい、仕事のやり方、決断の仕方など、すべてが代表社員らしくなく、頼りなく見えてしまうのは、当たり前のことなのです。
 彼が自分なりの代表社員になっていくには、まだまだ時間がかかることでしょう。

「ライザップ」成功の秘密を考える

新2代目代表社員が本当の意味での代表社員になるまで、どのくらいの期間がかかるのでしょう。2年先か3年先か、それは誰にもわかりません。もしかしたら、このまま頼りない代表社員のまま、時間だけが過ぎていくのかもしれません。
 もちろん、それでは困ります。
 私はどうしたらいいのかと、考えていました。そんなとき、たまたまテレビCMが目に入ってきました。いま話題の「ライザップ」という会社のコマーシャルです。
 メタボの男性も女性もたった2か月で腹筋の割れたシェイプアップボディに変身できるという、あれです。元ボクサーの赤井英和さんなどが登場するCMが盛んに流れていますから、ご存じの方も少なくないでしょう。
 そのCMの最後に出てくるのが、「ライザップは結果にコミットします」というフレーズです。2か月で確実に結果を出す、というわけです。
 私はダイエットやシェイプアップ以上に、この「確実に結果を出す」という点に関心を抱きました。そしてライザップのことを調べてみたのです。すると、なるほどなるほど、わかってきました。
 まず、契約して加入した人は毎日毎回の食事を携帯で写真に取り、専属トレーナーに送るのだそうです。するとトレーナーからその都度、「このお皿は必要ありません」とか、「もう一品肉類が足りません」とか、「ごはんの量が多すぎます」といった細かいアドバイスが返ってきます。こうしてライザップ流の食事を厳しく管理し、守らせるのです。
 また、週に2回はジムに通って筋トレを行います。筋肉は休ませることによって発達するので、筋トレは毎日やる必要はないそうです。そのかわり、ジムでは厳しいトレーナーが付きっ切りで、最も効果的なトレーニングメニューを厳格に消化させられるのだそうです。
 なかには脱落してしまう人もいるでしょう。しかし、多くの人がこのライザップ方式によって、実際に2か月で自分の身体を変革していくのだそうです。その高い成功率の秘密は、おそらく徹底的に厳しく管理するトレーナーの存在ではないかと、私は思います。
 それまでの怠惰な生活を反省して、敢然と意識改革を起こし、厳しい食事制限とトレーニングを一人でやり遂げ自己変革を成功させる、などということは普通はできるものではありません。隣で厳しさと愛情をもって強制的にやらせる人がいる、途中で投げ出さないようにモチベーションを上げてくれる人がいる、これがライザップの成功の秘密ではないかと、私は考えたのです。

まずは行動を強制的に変えてしまう

実際にライザップを体験した人にも話を聞きましたが、最初はかなり厳しいと言っていました。しかし、あるときから本人が変わるそうです。
 それは、食事改善と筋トレの成果がようやく出始め、目に見えて自分の体型が変わってきた、その時です。醜くたるんで出っ張っていたお腹が、少しずつ固く締まり引っ込んでいく。それが自分の目で確認できると、そのことが大きな快感となり、また自信にもなっていくのです。
 すると、トレーナーからやらされている意識が少し変わってきます。自分自身で「もっとしっかりやって結果を出そう」という気持ちが芽生えてくるのです。それはもう自己変革の始まりであり、結果として2か月での変身を成功に導くのです。
 意識を変えたかったら、まずは無理にでも行動を変えてしまう。それによって結果が変わり、自分が変わるということです。
 私は若いころコンサルタントから「考えを変えれば行動が変わる、行動が変われば業績が変わる」と教えられ、それがずっと頭に残っていました。そういうものかと、実践していたのです。しかし現実の世界は、決してその教えどおりではありませんでした。長年のあいだに染みついた人の考えや意識は、並大抵のことでは変わらないからです。
 私は「それならまずは行動を変えてしまおう」と考えました。ところが、行動だって自分自身ではなかなか変えることができません。無理に変えようと思っても三日坊主で終わり、結局は何も変わりません。
 そこで必要なのが、意識改革したい人を強制的に枠にはめてしまう、ということです。行動せざるをえない状況をつくってあげるのです。そうして無理やりにでも本人の行動を変えると、それに伴った答えが確実に出てきます。答えが出れば快感となり自信となって、本当にその人の意識が変わってくるのです。
 つまり、ライザップ方式です。
 私は「ライザップ式マネジメント強化法だ!」と閃きました。うちの新米2代目代表社員の佐藤修一を、このやり方で変えていこう。職員からもお客様からも信頼される代表社員に変身させよう。そう考え、1か月ほど前から実行に移したのです。

新しい代表社員に課した四つの行動

私は新しい代表社員に、毎日行うべき四つの行動を指示しました。そして「それは毎日必ずやり遂げること、それが終わるまでは絶対に帰らないこと」と言い渡しました。代表社員としての行動を強制的に習慣づけようとしたのです。
 私が指示した行動の一つ目は、毎日の担当者とお客様のメールのやりとりのチェックです。お客様からの相談などや当方からの連絡のメールのやりとりは毎日30~40通になりますから、そのすべてに目を通し、チェックをし、担当者に対して助言や指導のコメントを付けていきなさい、と指示しました。
 二つ目は、社内の職員同士でやりとりしたメールのチェックです。すべてを読み、チェックして、それぞれに代表社員としてのコメントを出しなさい、という指示です。
 三つ目は、決算書や試算表など、毎月作成してWEB上でお客様に提出している報告書のデータをすべて点検し、代表社員としての意見をその報告内容に添えなさい、ということです。
 四つ目は、お客様が事務所に相談に見えたときには、何時に見えて、誰が出席して、どのような面談が行われたのか、どのような結論になったのか、そのすべての議事録を、お客様がお帰りになったあとその日のうちに作成しなさい、そしてその日のうちにお客様にお送りしなさい、ということです。
 この四つのことを、いま新しい代表社員に強制的にやらせています。先日は、朝の3時まで会社に残ってやりとげたそうです。
 最初は、帰れなくなるほど大変かもしれません。苦しく辛い作業かもしれません。しかし、慣れてくれば仕事は早くなります。職員が日々何をやっているのかを把握できるようになります。職員の思考回路も理解できるようになってきます。また、お客様の状況もわかります。
 しかも、そうしたことのすべてが「可視化」されて蓄積されていくわけです。新代表社員の脳は間違いなく日々鍛えられ、「筋肉隆々」になるはずです。
 行動が変われば、それは確実に業績に結びついていきます。すると代表社員としての快感と自信が生まれ、考え方が以前とは違うものになっていきます。大将にふさわしいものに、自然に変わっていくのです。気がついたら、誰からも信頼される立派な代表社員になっていた、というわけです。
 これが私の言う「ライザップ式マネジメント強化法」です。

創業者の脳内を可視化、掌握させる

社長のバトンタッチで悩んでいる中小企業経営者は、たくさんいると思います。そんな悩みを感じている経営者の方は、この「ライザップ式マネジメント強化法」を是非取り入れてみてはいかがでしょう。
 新社長にどのような行動を強制するかはきっと企業によって違うでしょう。しかしどのような企業であっても、仕事や組織の動きを可視化させ、会社全体の流れ、部下の行動、お客様の考えといったものを掌握できるようにすることが大切です。創業者の脳内にしかなかったものを、すべて見えるようにしていって2代目社長に会社の掌握をさせるのです。それができれば、創業者からみても本物の2代目経営者になっていきます。
 当税理士法人の「ライザップ式マネジメント強化法」は8月にスタートしまして1か月が経過しました。いま確かな手応えを私は感じ始めています。
 新代表社員への職員のイメージも変わってきました。自分の仕事をよく見てくれている、お客様のことを理解してくれている、明らかに「ライザップ式マネジメント強化法」を始める前に比べて距離が近づいた、などの声がたくさん聞こえてきます。いまやっていることをこれからも継続できれば、彼は本当の代表社員になっていくと確信しております。
 重要なのは継続していくことです。そのために大事なのは、本人も指導する人間も「一切の妥協をしない」ということでしょう。お互いが鬼になって、初めて成果が出てくるのだと思います。
 数か月後には、まったく別人になった2代目代表社員をお客様、そして職員にもお見せできるはずです。日々変わっていく彼の姿を見ていて、私も、いまから非常に楽しみにしているのです。

税務総合戦略室便り 第70号(2015年09月01日発行分)に掲載

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