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一般財団法人を使った相続税対策

第71号(2015年10月01日発行分)
元国税調査官・税理士
黒崎 俊夫

設立のメリット

相続税の節税を図る目的で一般社団法人を利用するという方法がある。
 一般社団法人の最大の特徴は、出資者がいない、ということである。登記だけで設立することが可能であり、金銭の拠出も不要、目的の制限もない。かつての公益法人のように主務官庁の確認等も不要である。
 個人の持つ不動産賃貸物件を同族会社に移転することで節税を図る古典的な手法があるが、その法人に蓄積される利益は、将来の株価の増加となって反映される。その点、一般社団法人は前記のように出資持分という概念がない。つまり一般社団法人が所有する財産は誰のものでもないから、どんなに利益が貯まっても、相続税の対象から切り離すことができる。賃貸物件を社団法人に譲渡して、賃貸収入を社団に帰属させることで個人財産の増加を防ぎ、かつ将来の相続財産にもならない。社団法人も社員に給料を支払うことはできるので、家族を社員にして各々が利益を享受することも可能である。

不当減少防止規定

しかし、出口部分で相続財産から外れるのはいいとしても、入口部分の課税には注意を要する。
個人が所有する不動産等を一般社団法人に寄付(贈与)すると、時価で譲渡したものとして譲渡所得課税が発生し、寄付を受けた社団法人はその受贈益に対して法人税が課税される。
さらに一般社団法人への贈与により、贈与者等の贈与税等が不当に減少すると認められる場合は、一般社団法人を個人とみなして贈与税が課税される(相法66条④、ただし支払った法人税は控除される)。
 この不当に減少すると認定されないためには以下①~④の要件を充たす「非営利型法人」に該当させることが必要となる。(相施令33③)簡単に記すと、

  • ①運営組織が適正であること。
    ・各理事について3親等内理事割合が1/3以下であること。
     *相続税個別通達では、理事6人以上、監事2人以上の要件等を規定している。
  • ②特定の者に特別の利益を供与しないこと。
  • ③解散時の残余財産を国等に帰属させる旨の定めを定款に設けること。
  • ④当該法人に隠蔽や仮装の事実等がないこと。

 ②③④はともかく、①の規定のハードルは高い。社団法人に財産を単に寄付して無税で相続財産から切り離すことは容易でない。
 贈与だと右の縛りが厳しいので売買で移転するのが通常かもしれない。賃貸不動産のみならず今後の価格上昇が見込まれる非上場株式を価格の低い時に社団に持たせてしまうようなことも有用であるし、評価額は高いが換価性のない不動産などを社団法人にぶち込んで相続財産からはずすという使い方も考えられる。
 社団法人の購入資金の問題はついて廻るが、入口部分の課税をクリアーさえすれば後の相続税を心配しなくてすむ。剰余金や残余財産の分配を受ける旨の定款の定めは無効だが、場合によっては解散時の定款変更により残余財産の分配を可能ならしめることはできる。

一般社団法人と一般財団法人

以上一般社団法人についてだけ述べたが一般財団法人を適用する方法も同様に存在する。
 社団は人の集まりに法人格を与えたもの。財団は物の集まりに法人格を与えたものである。公益を目的とするものは各々公益社団法人、公益財団法人と認定される。
 日本将棋連盟が公益社団法人で、囲碁の日本棋院が公益財団法人である理由が理解できないように、税務の面でもここに述べた一般社団(財団)法人課税に関して必ずしも明確に整理されていないように思う。

 税務上一般社団(財団)法人は上図のような3階建の構造であり、各階はそれぞれ税務上の特色がある。私がここで紹介したのは、ごくさわりの部分のみであるが、今後、各階の特色を生かした租税回避的な利用が目に余るようだと、課税側もなんらかの対策を講じる可能性も、十分考えられる。ただ、節税のツールとしてこれらの利用が増加することは間違いないだろう。

税務総合戦略室便り 第71号(2015年10月01日発行分)に掲載

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