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海外に移住すれば節税できるのか?

category: 節税国際税務
第71号(2015年10月01日発行分)

その他

国内での節税対策に限界を感じている企業オーナーの中には、「海外に移住すれば節税対策になる」と漠然と考えている方が、相当いらっしゃるのではないでしょうか?
 当たり前の話になりますが、周到な計画をたて、しっかりとした準備をすることにより、大きな節税効果を生むこともありますが、無計画の状態で移住したとしても、後々思いもよらぬ課税関係が生ずることもあるでしょう。特にスキーム構築のためには、国際税務の知識が必要となりますが、これらの税制は頻繁に改正される点や国内法だけでなく、租税条約の内容も確認しなければならない点等が、非常に面倒な部分です。
 そこで今回は、これらの点を踏まえた上で、一般的に海外移住を利用した税務対策を行う場合、どのような点に気を付けるべきかを検討したいと思います。

2 非住居者のステータスは確保できるか?

海外移住を利用した節税対策で最も重要なポイントは、移住者が税務上の非居住者性を満たすことができるのかどうかという点です。非居住者性を満たすことができれば、日本での課税範囲が制限され、大きな節税効果につながるためです。
 どのような条件を満たすことができれば、非居住者性を確保できるのかという点ですが、原則、税務上では形式的な基準は規定されておらず、住居、職業、収入、資産、家族、滞在日数等を総合勘案して判断するという考え方になっています。したがって、海外移住をする際に、日本のオーナー会社の代表取締役を辞任することができるのかどうか、家族も一緒に海外に行けるのかどうか等の決断を迫られるケースもあるでしょう。
 中途半端な状態で出国し、その後税務調査で居住者として認定された場合、多額の追徴税額が生じるケースもあるため、非居住者性については出国の段階で確実にしておいた方がいいでしょう。
 また、今年の7月1日から導入された出国税が大きなハードルとなるケースが考えられます。出国税とは、海外に移住する際に、時価一億円以上の有価証券等を保有している場合は、出国時に当該有価証券等を時価で譲渡したものとみなして、日本で課税するという制度です。皆様の中には、株投資等はそれほど行っていないので問題ないのではと考えている方もいるかもしれませんが、当該有価証券等には自社株も含まれます。したがって、順調に業績を伸ばしている会社の場合、純資産が膨らみ、オーナー保有株式の時価相当額が一億円を超えている方も多いのではないかと思います。
 このような場合、租税回避の意思がない場合であっても、原則、出国時にみなし譲渡益課税が適用されますので、海外移住自体を断念するケースも生じるものと想定されます。
 したがって、自社株対策を考慮した上での、海外移住の適否を検討する必要があります。

3 オーダーメードの対策

どの税金の対策を行いたいのかという点を明確にすることも重要です。一般的に所得税と相続税(贈与税)の圧縮を考えている方が多いと思いますが、現地に実体のある法人を設立する事ができれば、場合によっては、法人税の節税対策も可能です。
 通常、節税対策を検討する際には、現状でどのような資産を国内外に保有しているのか、これらの資産を将来的に他者に売却したいのか又は子供に承継させたいのか、移住先で事業を行う予定はあるのか、承継者である子供も移住できるのか等を整理した上で、キャピタルゲイン課税のない国、相続税贈与税のない国、租税条約上で有利な取り扱いの国等を考慮し、オーダーメードでスキームを考える必要があります。
 また、スキームの内容にもよりますが、移住するという事は現地で生活することになるわけですから、現地の文化や生活環境、子供の教育関係等の事も考えた上で、ある程度長期的な視点での検討が必要でしょう。
 日本は現在、法人税率は減少傾向にありますが、富裕層に対する個人所得税や相続税の負担は大きくなっており、重税感を持っているオーナーも多いと思います。しかし、税金の話を抜きに考えたとしても、原発や震災、日本財政の債務超過に伴う円リスク、子供の教育等の点からも海外移住は一考の価値はあるのではないでしょうか。

税務総合戦略室便り 第71号(2015年10月01日発行分)に掲載

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