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対症療法的な節税対策を再考する

category: 節税法人税所得税
第71号(2015年10月01日発行分)

執筆者3

1 高額な報酬への税金対策

あるオーナー社長様は、「複数の会社からの役員報酬と不動産賃貸収入がある。このままでは、課税対象となる総所得金額が5000万円を超えており、負担する税金が重い。」「去年は、顧問税理士A先生に相談して、太陽光発電事業を始めた。そして、太陽光発電設備の即時償却(グリーン投資減税)制度を使って売電事業の所得を赤字にした。この事業所得の赤字と、給与所得や不動産所得の黒字との損益通算をおこない、課税対象所得を圧縮できた。先生の節税策のお陰で、給与の源泉税も還付してもらい、助かりました。」と仰っていました。
 続けて、「今年から、グリーン投資減税の即時償却は出来なくなったけど、A先生の助言を得て、今年も、太陽光発電設備投資を大々的におこなっている。今度は、生産性向上設備投資促進税制のB類型を利用して、即時償却をおこない、発電事業所得を赤字化してしまおうと思う。赤字幅が大きいので損益通算しきれないけれど、純損失として3年繰り延べられるので、その間、税金は支払わなくて済んでしまう。大助かりだよ。」と話しておられた。

2 節税策の再考

この社長様、会社から得ている役員報酬額が多いから、収める税金(負担)も大きいのだけれど、決算報告書のB/Sの負債勘定を見ていると、社長様からの借入金残高は2億円を超えていた。その原因は、どうやら、多額の報酬支払で会社の資金繰りが悪化したために、長年にわたり、一旦受け取った報酬を会社に戻 して(社長借入金となる)資金繰りに使っていたらしい。それが、積もり積もって2億円を超えた。
 確かに、役員報酬は過大ではない限り、全額が会社の損金となるので、法人の所得を圧縮する(その分、法人税の負担は減少する)ことに寄与します。そして、以前のように、法人税率が個人の所得税率に比較して高かった時には、有効な税負担軽減策でした。
 けれども、安倍ノミクスの下、法人税の実効負担率が30%近くまで低くなる一方、個人の所得税負担の実効税率は増税により最高50%を超えてしまう現時点で判断すると、必ずしも有効な手法とは言えません。
 しかも、イザ相続という場面を迎えた時に、この会社に対する貸付金は現金と同じです。資産評価によって低く評価されるという節税メリットは貸付金にはないのです。
 借入金は会社の株価(純資産評価額)下げには多少貢献するけど、真水の相続財産(貸付金2億円)には及びません。

3 生涯を通じた税負担の軽減策

この2億円は、相続税対策を含めたところで考えると、会社から返済してもらい、他の資産への投資に向ける、今はやりのタワーマンションとか、相続税法上、財産評価額が低くなる資産なら最高です。そのためにも、会社から社長様が受け取る報酬額を翌期から減らすのです。そうすると給与所得に対する税負担は下がります。会社は、この代表者報酬減で浮いた資金を代表者借入金の返済資金に回すのです。こうすると、会社の資金繰りにも影響しません。
 社長様が月々受け取る現金も減ることはありません。借入金の返済額には税負担がないので、受け取る現金は増加します。したがって、生活資金にも事欠きません。むしろ余剰が生じます。その資金を相続税対策目的の資産投資に回すのです。

4 第4コーナーを回る

そして、借入金を返済し終えたところで、報酬額を元以上に戻すのです。
 なぜ、元に戻すのか、それは代表者が退職する時に、相対的に税負担の低い役員退職金をより多く受け取る為なのです。報酬額を下げたままでは、大きな退職金を受け取ることはできません。
 また、役員退職金は法人の損金扱いされるので、株価引下げにも大きく寄与します。
 この、株式評価額の下がった時点で後継者に株式を譲ると贈与税の負担額は大きく減少します。このように、節税策は複合的かつ重層的に講じるのです。
 セカンド・オピニオンとして、このようなお話をオーナー社長様に申し上げたところ、オーナー社長様は即座に「では、役員報酬は下げます。そして、太陽光発電設備は個人ではなく、法人で投資することに変更します。法人の節税も図りたい。」と仰いました。

税務総合戦略室便り 第71号(2015年10月01日発行分)に掲載

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