「白黒はっきりさせようじゃないか」
物事の判断がすべてはっきりできればいいのですが、往々にしてそうでないのが世の常ということになります。白とも黒ともどちらとも判断しきれないものがあるということになります。俗にグレーゾーンと言われるものです。
このグレーゾーンといわれているものには次のようなものがあります。安全保障に関しては「グレーゾーン事態」という言葉があります。その他、パチンコの三点方式や過去にはグレーゾーン金利(最高裁で決着し、過払金請求の対象となっている金利があります。)などがあります。これらは法律解釈の仕方や、複数の法律に類似した規定があり適用する法律の違いにより生じたりしているもので割と判り易いものではないでしょうか。
しかし税務においてグレーゾーンと言われているものは前述した例とは少し違うものなのです。
みなさんが考えているグレーゾーンとは白と黒の間に存在するものとお考えと思います(図1参照)。私は、税務で考えるグレーゾーンとは図2のようなもので、白色はグレーゾーンの中にあるようなものだと思っています。
国税当局の現職時代にこのようなことを言われました。「灰色(グレー)は黒にしろ」「白色はグレーにしろ。グレーになったら黒にもできる」。こう考えれば図2のような捉え方をしているといっても過言ではないのです。
前述したように法律解釈などによるものであれば、複雑な問題は起きないのですが、税務においてグレーゾーンとは法律解釈ではなく「事実認定」が大きな要因となっています。
全国に12の国税局及び国税事務所があり、その配下に524の税務署があります。国税庁の発信する方針を基本に国税局ごとに独自の運営などを決めています。職員は約56000人います。したがって、税務調査は、国税局、税務署、最後は調査担当者によって判断はちがうのです。
例えば、会社で事業の用に供するとしてフェラーリを購入し資産計上して減価償却を開始しました。調査官は会社の説明に基づいて資料等を確認し納得しましたが、統括官に復命すると個人的な趣味嗜好が強いから否認する方向で説明資料を崩すための事実を把握しろと指示を受けました。
このように、会社及び調査担当者は「白色」と判断したのですが、統括官は「グレー・黒」と判断しているということです。つまり、一つの項目について判断する思考は十人十色というよりは、取引などによっては否認を前提に進めて行こうとするものです。
ある会計処理を、会社は白色と判断し、税務当局も95%白色かなと思っても100%真っ白でないなら何とか否認したいという思いが頭をよぎるのです。
税務当局の思考と会社の思考には、大きな温度差があるということを知っておくべきだと思います。そして、その温度差を埋めることができるのは税理士だということを。
しかし、税理士によっても違いがありますよ。
税務総合戦略室便り 第72号(2015年11月01日発行分)に掲載
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