タワーマンションのモデルルーム見学会に足を運んだ。訪れたのは西新宿に建設中の地上60階、高さ200mを超える超高層マンションのそれである。
大理石のエントランス、充実した共用施設、有人24時間管理体制、むくの木材のインテリア、天井高等のもたらす居住区間の快適性、ディスポーザー(生ごみ処理24時間可)等、落ち着いた中にもラグジュアリーな空間を演出するとはこういうことかと実感した。
南側バルコニーからは新宿の高層ビル群、西は富士山と眺望は言うまでもない。価額を聞いたら1.4億円とのこと、其の他の物件も最多価格帯7千万円台、計算すると坪単価330万円位だが、どれも即日完売抽選状態だという。
ただ、聞いたところ総戸数954戸に比しエレベーター数10基、駐車場286台は少し少ない気がするし、修繕積立金95円/㎡月も少ない気がした。また、火災の際にはしご車が届かないことや新聞配達員はどうするのか自分の中で解決していない。
マンション化率という言葉がある。分譲マンション戸数を総世帯数で除した値のことだが、全国のそれが12%であるのに比し、都内23区のその率は30%を超え、特に千代田区、中央区は80%に達するという。
個人が所有する不動産等を一般社団法人に寄付(贈与)すると、時価で譲渡したものとして譲渡所得課税が発生し、20階以上のマンションを超高層とすれば、現在建設、計画中の超高層マンションは23区内で109棟、50371戸、湾岸地域を中心に毎年2万戸前後の竣工が続く。(不動産研究所調査) また建築費の高騰で、マンション自体の供給はむしろ減少しているが、その反面、超高層へのシフトは加速し、今後首都圏で分譲されるマンションの5戸に1戸が超高層マンションとなるという。だが、3LDK70㎡の都区部平均分譲価格を6千万円とすれば、30代の通常サラリーマンの年収倍率は10倍を超え、手が届きにくい。職住接近の立地をあきらめ、やむを得ず郊外の戸建て住宅というのが現在の構図でもある。訪れた人も年配の人がほとんどだった。
海外主要都市との比較においても好立地の物件の割安感は強く、しかも円安。具体的には教えてくれなかったが、海外からのオファーも多いようだ。
見学者のために税務セミナーが開かれていたので参加した。質疑応答で誤りやすい質問があったので紹介する。
桐野夏生「ハピネス」はタワーマンションに住む人達の持つ格差感とか劣等感(居住階層とか販売価額差に起因)を浮き彫りにした小説で非常におもしろかった。今回私が訪れた建設地は小規模な家屋が密集する「モクミツ」地域を再開発により一団にまとめたものである。従って権利変換でマンション内に住戸を割り当てられた住民も2割近くいるらしい。彼らにとっては渡りに舟の再開発であったろうが、マンションの裏側は未だに昭和の面影を残すモクミツ地域である。彼らと高層階の住民や権利変換で取得した人間との間の格差感のようなものが顕在化しないことを老婆心ながら危惧するところである。
税務総合戦略室便り 第72号(2015年11月01日発行分)に掲載
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