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節税と資金繰り

第72号(2015年11月01日発行分)

執筆者3

経済を活性化し日本を元気にするために法人税率を下げてほしいという大合唱の前に、法人税率は実効税率で30%を切ろうとしています。
 年々下がる法人税率を目の前にすると、法人の課税所得を意図的に後年度に繰り延べ、その結果として税金の負担を低く抑えたいと考えるオーナー経営者の方は多いと思います。

1 高まる個人の税負担

前回も書きましたが、最近では、法人税ばかりではなく、個人の税負担も併せて低く抑えたいとお考えになるオーナー経営者様を多くお見かけします。その背景には、所得税の負担割合は年々大きくなってきていることがあります。
今の所得水準では税負担割合が高いので、何とか節税策はないものかとお考えになるのは当然としても、問題は節税手段にあります。
節税手段として太陽光発電事業や米国中古不動産とか中古航空機のリース事業への直接投資をお考えになっているオーナー経営者様をよくお見受けします。弊社の顧問先にもいらっしゃいます。
これらの事業に投資すると、多額の減価償却費を前倒しで計上できるので、当初は事業所得の損失となる→損益通算を使い他の所得との相殺を図れる→税負担が低くなるということになります。
 しかし、投資には資金が必要です。自己資金で賄えれば問題はありません。とは言っても、通常は投資資金の一部を借入に寄らざるを得ません。では、どこから資金を調達するのか、そこが問題になります。

2 節税のためにしたはずが

銀行の言葉ではありませんが、オーナー様が100%出資する法人から多額の金銭を借入することは、できることならやらない方がベターです。借りるのであれば、金融機関など他人からの借り入れをお勧めします。
というのも、オーナー経営者様が100%出資する法人から金銭の借り入れを行う場合、その金利が通達など税法に規定された「適正な利率(結構高い)」を下回ると、低額であるとされた金利部分は、オーナー経営者に対する「経済的な利益」の供与となり、役員報酬と認定されてしまうという税務リスクがあります。
 既に、高額の報酬を得ている場合、この追加報酬部分には、給与所得控除はなく、高率の所得税率(国税である所得税の最高税率は45%)がそのまま課されます。これだけでも税金の負担は法人税よりも高い。もちろん、地方税も追徴されます。
 更に、年間報酬額が株主総会等で決定された報酬限度額を超えてしまうと、その超えた部分「過大役員報酬」は、法人の損金にもなりません。結果として、法人と個人に対してダブルで課税されてしまいます。

3 資金繰りによるストレス

いずれにせよ、借り入れたお金は返済しなければなりません。借入金額が大きいと年々の返済額は大きくなり、投資した事業からの収入だけでは賄いきれないこともあります。
 このため、その後の資金返済や税負担増によるキャッシュ・アウトが個人の資金繰りをひっ迫することもあるのですその分、個人のキャッシュ・インを増やそうとして役員報酬を上げると、そこには高い税負担が待ち受けています。
 つまり、投資による節税策が裏目に出て、資金繰りストレスと新たな課税所得(税負担の増加)が発生してしまうことも有るのです。
 通常であれば、節税策の終了(出口対策は重要)時には新たな節税投資をおこない更に課税の繰延べを図るのですが、こういった場合、例えば(1)個人から法人投資に鞍替えするとか、(2)(税負担は増えるが)敢えて次の節税投資を縮小することで、資金繰りの緊縛から逃れるのも、良い選択肢の一つです。

4 対症療法的な節税策との決別

法人税が減税され、個人所得税が増税された今の節税策は過去とは違うのです。
 個人と企業とが一体(財布は一緒)となっているオーナー経営者にとって、法人サイドあるいは個人サイドのみの単なる対症療法的な単年度ベースでの節税策ではダメなのです。財布は一緒であるオーナー経営者としての生涯税負担の軽減という長いスパンでの節税策、法人と個人(相続税を含む)とを総合した計画的節税策が必須となっているのです。

税務総合戦略室便り 第72号(2015年11月01日発行分)に掲載

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