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非居住者からの相談

第73号(2015年12月01日発行分)

執筆者3

 外国法人の代表者(経営者)となって海外で事業経営を行っている「日本国籍のある非居住者」の税務申告についての相談があった。この方の様に、永年に渡る海外での生活拠点や海外法人を譲渡あるいは清算して日本に戻り、日本で余生を過ごしたいビジネス戦士(歴戦の勇士=老兵)は、少なからずいらっしゃるようです。
 その場合考えられる課税関係の相談事項に対する回答の要点をかいつまんでお話しします。
 質問の内容までは、プライバシーの問題もあるのでお話しできないことを予めご容赦ください。

1 回答の内容

 将来想定される相続や退職時の課税についての質問ですので、本人の状況によって大きく異なってくる可能性があります。But、大きな概論としては、各質問に対する回答は以下のとおりとなりますと前置しました。

①海外での相続の質問
事前知識として、日本では遺産取得課税方式を採用していますから、相続人(財産を相続した妻や子供)に課税されます。But、戸籍の無い米国をはじめとする諸外国にあっては、遺産課税方式を採用している国もあります。
 したがって、スペイン(生活の拠点)の相続を巡る規定の仕方が先ず問題となります。
 一般に、被相続人の国籍が日本であると、日本の民法にある相続規定が適用されるかと思われます(準拠法)ので、日本の民法等(相続統一主義)の規定に従った、相続手続き(遺言書の作成ほか)が要請されると考えられます。
 この点について、相続にあたっては、現地スペインの専門家に相談することをお勧めします。念のために。
〝スペインの子供〟は非居住者かつ日本国籍は無いと想定されるので、本人(被相続人となる者)が非居住者(スペインに恒久的〝住所〟があり、5年超にわたって日本の居住者ではなかったとの要件を満たす。)でありさえすれば、スペインの財産(国外財産)を非居住者であるスペインの子供(スペイン国籍)に相続させても、日本での申告義務はありません。
 被相続人が日本の居住者になっていると、相続人に日本国籍がなくても課税対象となりますので注意されたい。【中央出版事件後の法改正による】
 なお、質問の相続財産は高額であるため、相続人がスペインの居住者であると、スペインでは、居住者が8千ユーロ以上の相続を受けた場合に該当し、相続税の課税要件を満たすことになるかと思われます。ただし、ここは、現地の税務専門家にお任せすることをお勧めします。
②日本の居住者に関する質問
娘(日本の居住者)の口座に送金すると、贈与税の対象とされる恐れがあります。
 なお、国外送金・被送金調書は、一回100万円超であると課税官庁に提出されます。

2 本人の給与や退職給与

 タックスヘイブン国での役務の提供に対する対価(役員としての報酬や退職所得)は、原則としてその国の源泉所得(国外源泉所得)として取り扱われます(OECDモデル租税条約を参照)。
本人は日本の非居住者(スペインの居住者?)ですので、国外源泉所得を国内に送金しようがしまいが、日本において、所得税課税は生じません。
ただし、日本に戻ってきて(居住者となって)から退職金や海外法人の清算に伴う分配金を受け取ると、日本の居住者として全世界所得課税が適用されます。

3 まとめ

 日本人の経済活動や生活の範囲は国内に限ってはいません。その事実を受けて、 質問のあった例に限らず、海外財産の相続、非居住者への相続に関するご相談は増加する傾向にあります。
 その場合、海外の税制ばかりではなく、海外の相続に関する諸規定(民法を中心とする)についてどれだけ通暁しているかも問われることになります。生兵法は怪我の元になることへの深い洞察力も必要です。
 翻って、日本における相続課税の現場においても、近年、被相続人の海外財産把握と課税が重点的になされています。そのことを裏付けるかのように、財産申告や外国との情報交換に関する制度は大きく変わって(変わろうとして)います。
海外財産は申告しなくても大丈夫という認識を変えなければならない時代が到来しているのです。

税務総合戦略室便り 第73号(2015年12月01日発行分)に掲載

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