外国法人の代表者(経営者)となって海外で事業経営を行っている「日本国籍のある非居住者」の税務申告についての相談があった。この方の様に、永年に渡る海外での生活拠点や海外法人を譲渡あるいは清算して日本に戻り、日本で余生を過ごしたいビジネス戦士(歴戦の勇士=老兵)は、少なからずいらっしゃるようです。
その場合考えられる課税関係の相談事項に対する回答の要点をかいつまんでお話しします。
質問の内容までは、プライバシーの問題もあるのでお話しできないことを予めご容赦ください。
将来想定される相続や退職時の課税についての質問ですので、本人の状況によって大きく異なってくる可能性があります。But、大きな概論としては、各質問に対する回答は以下のとおりとなりますと前置しました。
タックスヘイブン国での役務の提供に対する対価(役員としての報酬や退職所得)は、原則としてその国の源泉所得(国外源泉所得)として取り扱われます(OECDモデル租税条約を参照)。
本人は日本の非居住者(スペインの居住者?)ですので、国外源泉所得を国内に送金しようがしまいが、日本において、所得税課税は生じません。
ただし、日本に戻ってきて(居住者となって)から退職金や海外法人の清算に伴う分配金を受け取ると、日本の居住者として全世界所得課税が適用されます。
日本人の経済活動や生活の範囲は国内に限ってはいません。その事実を受けて、 質問のあった例に限らず、海外財産の相続、非居住者への相続に関するご相談は増加する傾向にあります。
その場合、海外の税制ばかりではなく、海外の相続に関する諸規定(民法を中心とする)についてどれだけ通暁しているかも問われることになります。生兵法は怪我の元になることへの深い洞察力も必要です。
翻って、日本における相続課税の現場においても、近年、被相続人の海外財産把握と課税が重点的になされています。そのことを裏付けるかのように、財産申告や外国との情報交換に関する制度は大きく変わって(変わろうとして)います。
海外財産は申告しなくても大丈夫という認識を変えなければならない時代が到来しているのです。
税務総合戦略室便り 第73号(2015年12月01日発行分)に掲載
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