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「持分なし医療法人」への移行と税負担(第3回)

第74号(2016年01月01日発行分)

執筆者3

厚生労働省の勧めに従い、持分の定めのある医療法人が持分の定めのない医療法人へと移行するのに伴い、理事長等が出資持分を放棄し、出資の払戻しを受けない場合、その行為が相続税法66条4項(相続税の不当減少要件)に該当すると、特別の課税関係=「医療法人に対する贈与税課税」が発生します。
 すなわち、医療法人を個人とみなし、相続税法上の時価により医療法人が贈与を受けたものとして取り扱われるのです。
医療法人に対して、贈与税が課税されるのです。そして、この不当減少要件に該当するか否かについての判定方法は、政令(相続税法施行令第33条3項)に規定されています(相法66条⑥)。

1 相続税の不当減少要件とは?

政令では、先ず
(1)医療法人の『運営組織が適正であること』が要件とされています(相令33条③一)。
 具体的には、法令解釈通達15により判定することになります。
 法令解釈に従うと、チェック項目としては、
 ①一定の事項が定款等に定められていること
 ②事業運営及び役員等の選任が定款等に基づき行われていること
 ③その事業が社会的存在として認識される程度の規模を有していること

医療法(昭和23年法律第203号)第1条の2第2項に規定する医療提供施設を設置運営する事業を営む法人で、その事業が社会医療法人を想定した基準又は特定医療法人を想定した基準の要件を満たすもの

とあります。続いて、
(2)同族関係者等が役員等の総数の3分の1以下であること(相令33条③一)
(3)医療法人関係者に対する特別利益供与が禁止されていること(相令33条③二)
具体的には、法令解釈通達16により判定
(4)残余財産の帰属先が国、地方公共団体、公益法人等に限定されていること
(相令33条③三)
(5)法令違反等の事実がないこと(相令33条③四)
 以上の政令に規定する〝一定の非課税要件〟の全てをクリアしていると、出資持分を放棄したとしても、相続税法66条④にいう相続税の不当減少には該当しませんので、医療法人を個人とみなしての贈与税課税を受けることなく移行することはできます。

2 一定の非課税要件は厳しい

とはいっても、この要件の全てをクリアするというところが難しい。
 特に、(1)③の括弧枠内にある『社会医療法人又は特定医療法人を想定した基準』を満たすためのハードルは限りなく高いのです。仮に、これをクリアできるのであれば、いっそのこと、上記の青枠内にある社会医療法人特定医療法人そのものに認定された方が、法人税の優遇措置も受けられるため、有利であるということになってしまう。
 ハッキリ言って、青枠内にある基準が緩められない限り、あるいは、規模の小さな病院でも適用できるように要件が緩和されない限り、相続税法66条④の求めるこの〝一定の非課税要件〟を満たすことは極めて難しいことナノデス。八方塞ダネ。

3 デメリット

「持分なし医療法人」へ移行した場合、出資金を巡る問題から解放され、医療法人の経営が安定するというメリットはあるものの、逆にデメリットとして、次の2点を挙げることができます。
(1)医療法人を大きくしても、すなわち、経営努力を重ね、医療法人の規模(純資産)を大きくしても、自分の財産ではない。国からの預かり財産に過ぎないという側面があるという点です。このため、経営者ファミリーとして、支配権の継続に不安が生じる。事業の拡大意欲も削がれてしまう。
(2)また、前述の1(1)、③青枠内や(2)同族関係者等が役員等の総数の3分の1以下であること等の要件の下では、医療法人から支払われる役員報酬額や親族である役員の数等は厳しく制限されているため、真の意味での同族経営(同族による企業自治)を維持することはできなくなってしまう。
 では、「持分なし医療法人」への移行問題にどう対処すれば良いのって言いたいですネ。何もしないで、このまま放っておくのが、最も良い選択枝であるのカモ?しれません。
 次回は、この疑問に応えるべく、この問題を深堀してみましょう。

税務総合戦略室便り 第74号(2016年1月1日発行分)に掲載

税務総合戦略室便り 第74号(2016年01月01日発行分)に掲載

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