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国外所得の申告を失念していた場合

第76号(2016年03月01日発行分)

その他

1 国外所得の課税関係

「国外で生じた所得は、日本で申告する必要がない」と勘違いしている方が、時々いらっしゃいます。また、脱税の意図がない場合であっても、知らないうちに、海外預金に少額の利息が入金されている場合等もあると思います。
 居住者の場合、全世界所得に課税されますので、国外で生じた所得についても、日本で申告しなければなりません。
 本来申告義務があるにもかかわらず、申告していなかった場合は、修正申告書や期限後申告書の提出、場合によっては、税務当局の更正処分により、本税だけでなく、加算税や延滞税等を納付しなければならないケースも生じます。
 近年、税務当局は、海外情報網のネットワークを強化しており、国外財産調書制度や出国税の導入等、海外取引に対して力を入れていますので、注意する必要があります。

2 国外所得の課税の仕組み

しかし、海外の所得の申告を失念していた場合でも、結果として日本で税負担が生じない場合や負担額が少額となるケースがあります。
 これは、所得が発生する源泉地国(国外)でも納税をしている場合、以下のようなケースが考えられるためです。

①海外のプライベートカンパニーで生じた所得が課税漏れとなっていた場合

日本には、タックスヘイブン対策税制(以下、TH税制)という制度があり、日本の居住者が税負担率20%未満の国に子会社を設立(出資)し、当該外国子会社に所得が生じた場合、その所得を株主である居住者の所得とみなして、原則日本で課税されることになります。
 海外子会社に実体があるものとして、一定の要件を充足した場合は、課税されないという特例もありますが、プライベートカンパニー(以下PCという)の場合、実体がない場合がほとんどでしょう。
 例えば、日本の居住者が、香港にPCを有しており、当該PCが香港内で所得を稼得した場合、香港は一般的に税率が低い国に該当するため、TH税制により、香港で生じた所得を合算して、日本で申告しなければならないことになります。
 しかし、当該香港PCが、香港内ではなく税負担率が20%以上の国で、所得を稼得した場合、香港PCの税負担率は20%以上となるため、TH税制は適用されないことになります。
 したがって、低税率国に設立したPCに所得が生じた場合は、当該所得の源泉地国の税負担率を確認することが重要です。

②居住者が、海外で所得を直接稼得した場合

居住者は、前述したとおり、全世界所得課税となりますので、海外の所得も日本で申告しなければならないという原則があります。
 一方、二重課税を防止するための規定として外国税額控除という仕組みがあります。これは、居住者の場合、海外所得について、日本での課税と所得源泉地国との両国での課税(二重課税)が発生するため、確定申告の際、当該二重課税分を控除できるという制度です(控除限度額があるため、外国税額の全額が控除できるとは限りません)。
 したがって、国外所得が日本で申告漏れであった場合でも、源泉地国(国外)での税負担率が、日本の税負担率より高く、かつ、源泉地国で既に税金を納めているときは、結果として日本で税負担が生じないケースもあります。
 日本の税率の方が、高い場合であっても、既に源泉地国で納付済であれば、原則、日本では、日本での税率分との差額納付で済みます。

3 まとめ

海外所得の申告を失念していることに気付いた場合、一瞬、あわてるかもしれませんが、このように、結果として税負担が生じない又は少額となるケースはありますので、参考にして頂ければと思います。
 また、海外節税スキームを考える上で、「税率の差異」や「二重課税」というキーワードは、よく出てきますので、先述しました税の仕組みを理解しておくことは重要になってきます。

税務総合戦略室便り 第76号(2016年03月01日発行分)に掲載

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