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国外財産5000万円超報告制度について

元国税調査官が語る国際税務解説(第十二回)

元国税調査官 玉川育生

元国税調査官 玉川育生

〈経歴〉
国税局調査第一部外国法人調査部門
調査第一部国際調査課
調査第一部特別国税調査官部門

1971年生まれ 外国法人や外資系法人を中心とした国際税務に関する調査、審理事務に従事。各種ファンドや日本を代表する超大規模法人を調査。






1. 概要

 平成24年の税制改正で、国外財産調書報告制度が導入されることになりましたが、みなさんは御存知でしょうか。

 今後は、毎年12月31日時点で保有している国外財産が5000万円を超えている場合には、財産の内訳(種類、用途、所在、価額等)を記載した調書を翌年の確定申告期限までに税務署に提出する必要があります。平成25年12月31日時点の国外財産から適用されますので、該当する場合は平成26年3月17日までに調書を提出しなければなりません。

 ここでいう財産とは、現預金はもちろんのことですが、有価証券、不動産、貸付金等も含まれており、海外に所在するあらゆる財産が網羅されているといっていいでしょう。また、報告すべき金額は時価または見積り金額となっているため、未上場有価証券や不動産も時価を算定する必要があります。


2. 特徴

 本制度の特徴としてまず挙げられるのは罰則規定が導入されている点であり、調書を提出しなかった場合や虚偽記載をした場合には、一年以下の懲役または50万円以下の罰金が課せられることになっています。実際、このような罰則規定が即適用になるかどうかは、実務の状況をみていかないと判りませんが、これは税務当局の国外財産の補足に対する本気度の表れといえるでしょう。これまでも、所得税の確定申告において、所得が2000万円を超える納税者は「財産及び債務の明細書」を提出しなければならないことになっていましたが、罰則規定がなかったために提出しない納税者も多くいたようです。

 加算税についても規定が設けられており、国外財産調書に記載がある部分については加算税を5%軽減する優遇措置を設け、逆に調書の不提出に係る部分については加算税を5%付加する取扱いになっています。

 では、なぜこのような制度が導入されたのでしょうか。これは、国外財産に関する課税漏れが、税務調査で発覚するケースが多いことが挙げられます。海外で得た有価証券のキャピタルゲインや海外の不動産収入のような所得税の申告漏れや国外財産に関する相続税の申告漏れが頻発しているからです。つまり、これらの情報を事前に把握しておくことにより、効率性のある調査を進めようとしているのです。

 一般的に、税務当局が国外財産を把握する手段としては、国外送金調書や租税条約に基づく情報交換規定がありますが、今後はこの国外財産調書も大きな意味をもってくると考えられます。


3. 対策

 では、国外財産を有しながら、合法的に調書を提出しなくてもいい方法はあるのでしょうか。
 まず、考えられる方法の一つとして、国外財産について家族に名義を分散するという方法があるかもしれません。しかし、この方法は贈与税を考慮しなければならないというデメリットがあります。

 次に、海外に法人を設立し、その海外法人に国外財産を保有させるという方法はどうでしょうか。この場合、海外法人を設立した個人の方は当該海外法人の出資者となるため、海外法人が国外財産を保有することにより純資産が増加した場合には、海外法人の時価ベースの純資産が5000万円超となってしまう可能性があります。また、設立した法人が低税率の国に所在する場合、タックスヘイブン税制を考慮しなければなりません。このように考えた場合、調書を合法的に提出しないための得策を見つけることは基本的に難しいかもしれません。

 国外財産報告制度の導入をネガティブに捉えている方が多いように思われますが、私は、これを相続税対策のためのよいきっかけにすることが重要ではないかと考えます。
 相続税対策は、一般的に早く対策を打った方がその効果は大きくなります。また、親子共々海外志向がある方であれば、国外財産について相続税や贈与税が課税されないケースもあります。

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税務総合戦略室便り 第41号(2012年9月1日発行分)に掲載


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