「帰国の日系ブラジル人雇用と偽装」 2億円所得隠し指摘
(当コーナーでは元国税調査官が申告漏れのニュース記事を分析し、事件の裏側を解説します)
税務総合戦略室
〈経歴〉国税局課税第二部資料調査課 1967年生まれ 国税局の調査事案で、特に大口・悪質・困難事案に従事。IT関連の特別な税務調査手法や国税局資料調査課の高度な調査能力を有し、税務署職員の能力向上のため指導を行ってきた。 |
“ すでに帰国した日系ブラジル人労働者らを雇ったように装って給与を計上し、所得を隠したとして、愛知県豊橋市の人材派遣会社「東海テクノ」と関連の人材派遣会社「東海人材」が、名古屋国税局から総額約2億3千万円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。
追徴課税は、重加算税を含め計約8千万円とみられる。両社は修正申告をし、納税している。
関係者によると、両社は主に日系ブラジル人を雇って自動車部品会社や食品会社に派遣するなどしていた。派遣先などから受け取った派遣費や委託費から、過去に雇ったが、すでに帰国や退職した日系ブラジル人の名前で計上した架空給与を差し引き、所得を圧縮していたという。
こうした経理操作で隠した所得は、東海テクノが2010年5月期までの7年間で約1億8千万円、東海人材が10年2月期までの5年間で約5千万円とされる。
追徴課税は重加算税を含めそれぞれ約7千万円、約1千万円とみられる。
隠した所得は、両社の社長を兼ねる男性が家族名義で預金していたほか、昨年死去した会長が生前、株や絵画の購入費に充てていたという。”
【2011年7月26日 asahi.com】
〔解説〕
架空人件費。多額の脱税に用いられる手法である。遡及事業年度が7期なので、調査部署は、名古屋国税局課税二部資料調査課と推察する。
「たまり」(不正資金の資産化)は、親族名義預金と亡くなった会長が購入した株・絵画の模様。
親子脱税物語♪
脱税志向のDNAは親から子へ。ゲノム解明ってか!統計とったら面白いかもね。
ところで、外国人従業員の人件費調査って、難しいんだよね。不法就労とかあって、国税の前に顔を出したくないとか言われちゃって。
そこで、私の経験談……。
中堅ゼネコンの下請けの調査をしたときの話。
架空人件費を検討するために、とある部署だけ、現物確認調査をしたわけ。抜打ちで、従業員名簿と、実際の「人」を照合するという手法。
私が従業員の名前を呼ぶ。
「えー、山田さん」
「……」
返事がない。再度、
「山田さんはいませんかー」
「……」
返事がない。
架空人件費くさいな。私は内心喜んだ。架空人件費は金額がデカいからだ。
上司への復命が楽しみだ。これはイケる。
胸が高鳴る、こんな気持ちは初恋以来だ。(←アホか)
グッドジョブ・アフター5の生ビールが旨くなるぜっ。
現場監督に、山田さんがいませんけど、どこにいますか!と詰問。
監督曰く
「おいっ、山田!」
と叫ぶ。ちゃんと返事しろっ、と!「はい」
と返事があった??? んー?
声の主を見ると、外人が「山田」という名札をつけていた。
就労法規や元請への諸々の都合で、外国人は雇えなかったらしい。山田は、本名はともかく実在したわけだ。
とんだ結末で、人件費は是認(笑)経験談は、以上。
事件の会社は、日系ブラジル人とのこと。製造業が多い地域に、日系3世が就労していることが多い。
確かに、ホームリーブなどで入出国を繰り返すので、架空人件費を作りたくなる環境ではあるが、この行為は言語道断である。
しかも、私財を肥やすためにである。
大手企業は脱税事件を嫌う。この人材派遣会社は、たかだかこのくらいの悪さで派遣契約の打ち切りという、お仕置きを受けることになるだろう。
そして、被害は派遣登録していた人達が受ける。
何ともやるせない世相である。
税務総合戦略室便り 第33号(2011年11月30日発行分)に掲載
ご相談・お申し込み・お問い合わせ
お電話でも承っております。お気軽にお問い合わせください。
TEL:03-5354-5222
