税務署の指摘する「利益調整」は正しいのでしょうか?
「税務調査から学ぶ 第三十三回」
税務総合戦略室 室長
〈経歴〉国税局課税第二部
1965年生まれ 法人税調査と税務職員の評定・指導・監督業務を行う。 |
先日、四国の顧問先に税務調査が入りました。私共の開催している税務総合戦略セミナーをきっかけに顧問契約を結んでいただいたお客様です。税務総合戦略室のメンバー2名で調査の立会いを行いましたが、その際、税務署の調査官の調査手法に大きな疑問を感じました。今回は税務署が指摘する「利益調整」について考えてみたいと思います。
税務署が利益調整を指摘した理由は?
調査が行われているお客様は四国と関西地方に全部で9社のグループ法人を有する企業です。事業が順調に成長し、また経済社会の変化に応じて新事業を展開するなどの理由で別会社を設立するケースは多く見られます。グループ会社化することで経営効率を図り、かつ節税効果も期待することができるからです。
今回、私共は税務調査の途中から関わらせていただきましたが、すでに税務署によりなんと50項目、金額にして総額5億円にも及ぶ指摘事項の一覧表が提示されていました。
調査当日の調査官と我々のやり取りは次のようなものでした。
当方:「この一覧表にある指摘事項の問題点と否認理由を教えてください」
税務署:「グループ会社を使った利益調整なので認められません」
当方:「ですから、どのような理由により個々の取引が利益調整と認定されるのか、その理由と根拠法令を教えていただきたいのです」
税務署:「理由と言われても……」
当方:「企業としてはそれなりの目的と理由があって行っている経済取引です。当局が利益調整として否認するのであれば、同業他社と比較して金額が高すぎるとか、役務の内容に照らして対価性に問題があるなど具体的な理由を提示いただかないと反論の仕様がないのですが」
税務署:「えー、この一覧表は指摘事項というわけではなく、疑問点を抽出しただけですので署に戻って上司と相談して再度お邪魔します」
当方:「すでに調査着手より3ヶ月が経過しています。お客様の時間的・心理的負担も大きいので、できるだけ早期の終了をお願いします」
税務署の調査手法の問題点について
私を含め、税務総合戦略室は全員元国税出身者であり、国税局において税務署の職員の指導も行ってきました。税務署の調査官の思考回路は熟知しています。今回の調査において調査官の考えていることを推測すると、
- (1)課税できるかどうかわからないが、とりあえず「利益調整」を理由に問題提起してみよう。そのまま認めて修正申告書を提出してくれたら一番いい。
- (2)最終的に否認できそうもない事項も含めて指摘しておいて、途中で指摘事項を削ることで上手く調査を終結させよう。
納税者の方は税務調査に対して非常に緊張していますので、調査官に指摘事項を提示されると、『納得できないが、税務署の指摘なのだから認めなければならないのだろうか……』『税務署の言うことに反論すると心証を害して今後に悪い影響を及ぼすのではないか……』と考えてしまいます。
今回の調査のやり方は、わかりやすく言うと《確たる理由もなく税金をふっかける》手法です。
本来の税務調査は一つ一つの取引をきちんと事実認定し、その事実が税法に照らし合わせて課税上の問題がある場合に初めて指摘するべきものです。そのようにして問題提起されたものであれば、
- (1)調査官の事実認定が本当に正しいものであるかの検証
- (2)事実認定からの法令適用が適正であるかの検証
- (3)課税処分が妥当であるかの検証(過少申告加算税対象か重加算税対象か)
担当の調査官はまだ経験の浅い職員でしたが、質問の仕方・態度から、今までこのような間違った調査手法(理由もなくふっかけてからディスカウントする手法)で実績をあげてきたのではないかと思われました。
国税当局のOBとして、上司・先輩がきちんとした指導を行っていないのではないかと非常に残念な印象を持ち、このような調査からお客様を守らなければならないとの思いを強く感じた調査立会いでした。
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「税務職員の裁量により税金の追徴が行われる」というイメージから多くの方が税務調査に不安を感じていらっしゃいます。裁量により課税が行われる理由は、現実の経済取引には税法では規定し尽せない、いわゆる「グレーゾーン」が存在するからです。税務職員が調査に臨む際の思考回路やグレーゾーンの事実認定に至るまでの調査手法を学ぶことで、税務調査に対する不安感を払拭し、適切な対応と交渉を行うことが可能となります。是非セミナーにご参加いただければ幸いです。
税務総合戦略室便り 第33号(2011年11月30日発行分)に掲載
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