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外国子会社合算税制(タックスヘイブン税制)について

元国税調査官が語る国際税務解説(第三回)

元国税調査官 玉川育生

元国税調査官 玉川育生

〈経歴〉
国税局調査第一部外国法人調査部門
国税局調査第一部国際調査課
国税局調査第一部特別国税調査官

1971年生まれ 外国法人や外資系法人を中心とした国際税務に関する調査、審理事務に従事。各種ファンドや日本を代表する超大規模法人を調査。






一、制度の概要

 今回は、外国子会社合算税制について説明させていただきたいと思います。本税制は通称タックスヘイブン税制(以下「TH税制」という)といわれていますので、耳にした事があるのではないでしょうか。

 日本の内国法人である親会社が、タックスヘイブン地域に子会社を設立し、当該地域に利益を留保することにより、日本の課税を免れるという租税回避を防止するための規定です。よく、勘違いをしている方がいらっしゃいますが、タックスヘイブンの「ヘイブン」とはhaven(避難所)のことであり、heaven(天国)ではありません。これらの地域は、税負担がまったくないか低税率であることが特徴です。TH税制の課税対象となる低税率の基準とは20%であり、日本の実効税率のおよそ半分となっています。

 タックスヘイブン地域としては、一般的には、ケイマン諸島やバミューダなどの島国がよくとりあげられますが、アジア地域にも、香港やシンガポール等が存在します。
 タックスヘイブン地域の利用の効果は、低税率国に利益を移転することによりグループ全体の税コストを最小化すること、またそれに伴うフリーキャッシュフローの最大化にあります。

 日本の企業は伝統的に、タックスプランニングを行い税コストを減少させることに消極的ですが、欧米では経理部門とは別に税務部門を設け、税の専門家によるタックススキームの策定が当たり前のように行われています。日本の企業も、今後はTH税制に限らず、他の国際税制も考慮した上で、利益の極大化を進めながら、税コストの最小化を目指すという高度な戦略を遂行していく必要があるのではないかと思います。


 話は少し横にそれましたが、TH税制の概要について解説します。
合算課税の対象となる子会社に該当するかどうかは、次の順序で判断していくことになります。

(1)進出先の子会社が外国関係会社に該当すること
外国関係会社とは、居住者、内国法人、特殊関係非居住者により50%以上の株式を保有されている会社をいいます。
(2)外国関係会社が特定外国子会社等に該当すること
特定外国子会社等とは、外国関係会社の所在する地域の税率が20%以下である外国関係会社をいいます。当該税率は、現地の法令に規定されている税率ではなく実効税率で判断することになります。
(3)内国法人が特定外国子会社等の株式の10%以上を保有していること
 これらのすべての条件を満たしている場合には、内国法人は、特定外国子会社等に留保された所得金額のうち、内国法人の持株割合に対応する金額を内国法人の所得とみなして、日本で合算課税されることになります。

 しかし、上記の条件を満たしている場合でも、タックスヘイブン地域で、独立した事業としての実態を備えた業務を行っている場合には経済合理性があるので、合算課税を行うことは適切ではありません。そこで、以下の適用除外要件を満たしている場合には、原則TH税制は適用されません。



(1)事業基準
主たる事業が株式の保有等でない場合。これらの業務は、日本で業務を行うことが可能なためタックスヘイブン地域で事業を行う積極的な理由がみいだせないためです。
(2)実態基準
タックスヘイブン地域に事務所や工場等の固定施設を有している場合。事業を行うには一定の場所が必要であり、ペーパーカンパニーは認めない趣旨です。
(3)管理支配地基準
タックスヘイブン地域で、株主総会等の開催、帳簿の作成等が行われていること。現地でこのような作業が行われていない場合には実態が乏しいと考えられるからです。
(4)非関連者基準または所在地国基準
ⅰ)非関連者基準
 卸売業、銀行業、信託、金融商品取引、保険、水運、航空運送業の7業種
卸売業のように、その事業の性質上、国際的に展開される一定の業種については、その取引形態が真に独立企業にふさわしいものであるかとの判定は、非関連者との間で一定以上の取引を行っているかどうかによりその経済合理性を判定することになります。
ⅱ)所在地国基準
 上記7業種以外の業種
 (小売業、製造業、サービス業等)
これらの業種は、地域密着性が強いため、所在地国で業務が行われているかどうかという観点から経済合理性を判定することになります。
また、地域統括会社については、事業基準と非関連者基準において、納税者に有利な改正が行われましたので、今後は海外進出の幅が広がるのではないでしょうか。

 しかし、適用除外基準を満たした場合でも、一定の株式の配当やキャピタルゲイン等(資産性所得)については、日本から特定外国子会社等に付け替えが容易な所得であるため、当該所得は、合算課税の対象とする旨の改正が行われました。 
 TH税制の全体像については、図1が参考になりますのでご確認ください。


外国子会社合算税制の概要及び主な改正事項
画像クリックで拡大いたします

二、TH税制と外国子会社配当益金不算入制度の関係

 平成21年の税制改正により日本でも外国子会社配当益金不算入の制度が導入されました。これに伴い、外国子会社合算税制の考え方が大きく変わりました。

 それまでは、内国法人に合算される所得については特定外国子会社等に留保された金額が対象でしたが、同制度導入に伴い、留保金額はもちろん、配当として流出した金額も合算課税の対象となりました。
 これにより、特定外国子会社からの配当について外国子会社配当益金不算入の適用を受けたとしても、その配当については、合算課税の対象となります。したがって、今後は、今まで以上に、TH税制の対象とならないような子会社を設立することが重要になると考えます。

 また、特定外国子会社等が受ける次の配当のうち、(1)特定外国子会社等がその外国子会社(当該特定外国子会社等が25%以上かつ6月以上株式を保有している外国法人)から受ける配当、(2)特定外国子会社が他の特定外国子会社から受ける配当の額のうち合算対象とされた金額からあてたものについては、適用対象金額から控除されることになりました。
 これにより、タックスヘイブン地域にペーパーカンパニーの持株会社を所有したとしても、傘下の外国子会社に該当する法人からの配当は適用対象金額に該当しませんので、タックスヘイブン地域に持株会社を設立しやすくなりました。

 したがって、今後についてはTH税制の改正事項や外国子会社配当益金不算入制度の利点を考慮しながら、会社に最も適したスキームを構築していく必要があります。

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税務総合戦略室便り 第32号(2011年10月30日発行分)に掲載


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