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「無予告調査」は拒否できないのでしょうか?

「税務調査から学ぶ 第三十二回」

元国税調査官・税理士 風間光裕

税務総合戦略室 室長
元国税調査官・税理士 風間光裕

〈経歴〉国税局課税第二部
国税局総務部人事第一課
国税局調査査察部 

1965年生まれ 法人税調査と税務職員の評定・指導・監督業務を行う。
税務組織の中枢を経験し、税務署職員の調査手法や思考回路を熟知しており税務調査対策に力を発揮する。






 ある朝突然、連絡もなしで自宅や本社・支店などに何人もの税務職員がやってくる…ドラマのワンシーンのような出来事が起こったら、どう対応したらよいのでしょう。

 事前連絡のない税務調査(税務署では無予告調査と呼んでいます)を行う場合、それなりの理由があります。今回は税務署が連絡なしで調査に来る際の理由と目的について解説させていただきます。

「無予告調査」が行われるケースは?

 国税庁の報道発表資料【国税庁レポート】では調査の事前通知について次のように説明しています。
『調査に関しては、納税者の都合を伺うため、原則として調査日時などをあらかじめ電話により通知しています。ただし、ありのままの事業実態などの確認を行う必要がある場合には、事前に通知は行っていません。』

 では、税務署が考える「ありのままの事業実態の確認が必要な場合」とはどんな場合でしょうか?

  • 主に現金を扱っており、現状における管理状況の確認が必要な場合
  • 資料情報等から売上除外などの不正が想定されるため原始記録の把握が必要な場合
  • 関係法人を利用した利益調整が想定されるため現状の確認及び記録の把握が必要な場合
  • 過去の調査状況から非協力が想定される場合
というようなケースには事前の連絡なしで調査を行っています。

 事前の通知をすることにより調査の忌避、妨害、帳簿書類の破棄・隠匿が想定される場合、分かりやすく言えば【連絡すると証拠隠滅の恐れがある】場合には無予告で調査を行うという考え方です。

 現在は、所得税の調査で約2割、法人税の調査で約1割が連絡なしで行われていますが、飲食業・理美容業・小売業などの現金商売の場合、無予告調査の割合はもっと高くなります。また、大口・悪質事案を担当する国税局の資料調査課では約9割の調査を無予告調査により行っているという状況です。

無予告調査の目的について

 「ありのままの事業実態の確認」を行うことを税務当局では「現物確認調査」と言っています。現物確認調査とは《現状を》、《現物で》、《確認する》、すなわち抜き打ちで金庫やレジや机の中などを調べることを言いますが、その目的は例えば、

  • 現金監査により現金の残高を確認し、帳簿の残高と確認すること
  • 売上伝票・領収証控・レジジャーナルと売上集計表を照合して、売上の除外を発見すること
  • 棚卸の原始記録である原票を把握し、棚卸除外を発見すること
  • 固定資産の確認を行い架空資産の計上を行っていないか確認すること
  • 社内の配席図・組織図・源泉徴収簿・履歴書と実際の社員をあたって架空人件費を発見すること
などにあります。

無予告調査や現況調査は拒否できないのでしょうか?

 何もやましいところがなくても、できれば突然の調査は拒否したいというのは当然だと思います。
 無予告調査や現物確認調査を拒否することはできないのでしょうか? 法人税調査における質問検査権の根拠条文の要旨はこれだけです。

【法人税法第153条(質問検査権)国税職員は、法人税の調査に関する調査について必要あるときは、法人に質問し、又はその帳簿書類その他の物件を検査することができる。】

 法律の根拠はこれだけしかありませんので、税務当局の見解と裁判例から実務上の運用をしているというのが実情です。納税者の権利については一切法律に書かれていません。納税者の権利を制度的に保障する「納税者権利憲章」が平成23年度税制改正大綱に盛り込まれましたが、未だ国会を通過しておらず、2011年度改正では見送る方針との報道もあります。

 税法には事前通知の明文規定がありませんが、最高裁では「調査日時の通知は質問検査を行うための要件ではない」と税務当局を支持した判決を出していますので、無予告調査は正当な理由なく拒否できないというのが現状の解釈です。

 しかし、正当な理由があれば一時的に断ることは十分可能です。正当な理由の例示は公表されていませんが、常識的に考えて身内や大切な方の冠婚葬祭、どうしてもはずせない重要な商談・契約などの場合、調査の仕切りなおしの交渉は正当な権利だと思います。


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税務総合戦略室便り 第32号(2011年10月30日発行分)に掲載

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