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海外取引と消費税について

元国税調査官が語る国際税務解説(第二回)

元国税調査官 玉川育生

元国税調査官 玉川育生

〈経歴〉
国税局調査第一部外国法人調査部門
国税局調査第一部国際調査課
国税局調査第一部特別国税調査官

1971年生まれ 外国法人や外資系法人を中心とした国際税務に関する調査、審理事務に従事。各種ファンドや日本を代表する超大規模法人を調査。






一、基本的な考え方

 ある取引が消費税の課税対象に該当するかどうかの判定を行う場合、みなさんは、自信を持って答えることができるでしょうか。

 消費税が課税されない場合には、不課税、非課税、免税の3パターンがあります。これらの違いを説明できる人は、消費税についてある程度理解できている方ではないかと思います。

 海外取引について考えた場合、不課税取引と免税取引を混同している方が多いように感じます。そこで、まず始めに、図1のフローチャートを参考にしながら、課税取引に至るまでの基本的な考え方を説明したいと思います。課税対象取引に該当するためには、まず、3つの条件が必要となります(図1判定1)。


  • (1)事業者が事業として行うこと(非該当例:サラリーマンが行う中古パソコンの売却等は、サラリーマンが事業として行うものではないので課税対象に該当しません)
  • (2)対価性があること(非該当例:寄付金や補助金は対価性がないため、課税対象に該当しません)
  • (3)国内取引であること(非該当例:国外取引は課税対象に該当しません)これらの条件のうち、ひとつでも満たしていない場合は不課税取引に該当します。

消費税課税の判定


 海外取引について検討する場合、(3)の国内取引に該当するのか又は国外取引に該当するかの判定(以下「内外判定」という)が大きなポイントとなります。

 内外判定の原則的な考え方は、資産の譲渡の場合には、資産を引き渡したときにその資産が所在していた場所となり、役務の提供の場合には役務の提供を行った場所により判断することになります。


 国内で完結する取引や国外で完結する取引にかかる内外判定は、容易に判断できますが、国内及び国外にわたって行われる取引等はどのように考えるのかが問題となります。このような場合、一定の基準がないと判断に窮する場合がありますので、内外判定の基準は、取引の種類ごとに、法令に規定されています。(消費税法第4条3項、同施行令6条参照)
 内外判定により国内取引に該当し、図1判定1の条件を満たした場合には、次に非課税取引に該当するかどうかの判断が必要となります(図1判定2)。

 非課税取引とは、消費の概念になじまないものや社会政策上の配慮から消費税を課すことが困難なものについて、課税対象外としているのです。

 例えば、土地や有価証券等は、時の経過に伴い減価するものではなく、消費の概念になじまないといえます。また、社会保険医療等は、社会政策上の観点から消費税を負担させることは、困難なため非課税取引に該当することになっています。
 非課税取引に該当せず、図1判定2の条件を満たした場合には、免税取引に該当するかどうかの検討をする必要があります。(図1判定3)

 免税取引の代表的な例として、輸出取引や非居住者に対する役務の提供等が挙げられますが、免税取引は、上述したように、図1判定1の条件を既に満たしているので、国外取引ではなく、国内取引に該当します。ここが、国外取引と免税取引を混同しないためのポイントになってきます。
 では、国外取引として不課税取引に該当する場合と免税取引に該当する場合には、どのような違いがあるのでしょうか。

 消費税が最終的に、課されないという点は同様ですが、課税売上割合の算定上、大きな違いが出てきます。国外取引として不課税取引に該当する場合は、取引金額を課税売上割合の計算上、分母・分子に含める必要はありませんが、免税取引に該当する場合は、課税売上割合の計算上、分母・分子に含める必要があります。したがって、免税取引に該当する方が、課税売上割合が高くなるため、仕入税額控除の計算上有利になります。

 図1判定3により免税取引に該当しなかった金額は、最終的に、課税されることになり、消費税の計算上、課税標準に含めることになります。



二、説例

 それでは、図1を参考にしながら、課非判定を行ってみましょう。

  • (問1)海外の工事について日本法人A社が元請し、日本法人B社が下請けとなった場合のA社からB社に支払われる工事代金の課税関係は?

    (回答)役務の提供の内外判定は、原則、役務の提供を行った場所で判定することになりますので、たとえ、元請、下請両者が日本法人であったとしても、国外取引に該当します。

  • (問2)日本法人A社が、国内で広告の企画、立案を行うとともに、米国での広告の掲載を請け負い、米国法人のB社から広告料を収受する場合の課税関係は?

    (回答)役務の提供の場合、内外判定は、原則、役務の提供地で判断することになります。
    しかし、本ケースの場合、役務の提供地は国内及び国外にわたって行われているので、このような場合は、役務の提供を行う者の事務所等の所在地(日本)で判断することになり、国内取引に該当します。
     米国法人B社は、非居住者に該当しますので、非居住者に対する役務の提供として免税取引に該当することになります(ただし、B社が日本支店を有している場合には、原則、課税取引に該当します)。

  • (問3)日本に支店を有する米国法人A社が、当該日本支店を通じて、日本の法人B社にソフトウェアの貸付を行い、使用料を収受した場合の課税関係は?

    (回答)ソフトウェアの貸付けにかかる内外判定は、著作権(ソフトウェアは著作権として取り扱います)の貸付となるので、貸付を行う者の事務所等の住所地により判定することになります。
     A社は米国法人であり、住所地は、米国となるので、たとえ、日本支店を介しての取引であったとしても、国外取引となり、不課税取引に該当します。

 いくつかの事例を、検討してきましたが、海外取引の課非判定の重要なポイントは、図1のフローチャートにそって、【1】内外判定の規定に従い、国内取引に該当するのか、国外取引に該当するのかを明確にすること、【2】国内取引に該当する場合には、当該取引が免税取引に該当するのかどうかを確認することが重要となります。



三、非課税資産の輸出等の特例

 仕入税額控除の計算上、原則、非課税売上に対応する課税仕入については仕入れ税額控除は認められません。また、非課税売上は、課税売上割合の計算上、分母のみに含めることになります。しかし、非課税資産の輸出等については、課税売上割合の計算上、分母・分子に含めることになります。

 これは、国境税調整の考えのもと、非課税取引に要する課税仕入に係る消費税額の負担が輸出先の国外の者に転嫁されないようにするための規定です。

 従って、非課税資産の輸出等にかかる金額は、課税売上割合の計算上調整はされますが、免税事業者の1000万円の判定や簡易課税の5000万円の判定には、影響しませんので注意してください。

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税務総合戦略室便り 第31号(2011年9月30日発行分)に掲載

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