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なぜ税務調査で社内不正が発覚するのでしょうか?

「税務調査から学ぶ 第三十一回」

元国税調査官・税理士 風間光裕

税務総合戦略室 室長
元国税調査官・税理士 風間光裕

〈経歴〉国税局課税第二部
国税局総務部人事第一課
国税局調査査察部 

1965年生まれ 法人税調査と税務職員の評定・指導・監督業務を行う。
税務組織の中枢を経験し、税務署職員の調査手法や思考回路を熟知しており税務調査対策に力を発揮する。






 通常は歓迎されない税務調査ですが、唯一、調査があってよかったと思うケースがあります。それは、税務調査により今まで気づかなかった横領着服などの社内不正が発覚した場合です。

 今回は、通常の過程では見つからなかった社内不正が、なぜ税務調査で発見されるのか解説いたします。

税務調査と社内監査の違い

 税務調査の目的は申告された所得金額が正しいものであるかを確認することです。そのために調査で行うことは、大きく分ければ、

  • 1.収益の計上漏れが無いかを確認する。
  • 2.経費の架空・過大計上が無いかを確認する。
  • 3.固定資産・棚卸資産の実数を確認する。
ということに集約されます。この手続は社内不正のために行う監査と全く同じだと言えます。

  • 1.売上計上漏れの把握=売上代金の着服の監査
  • 2.経費の架空・過大計上=架空・過大な発注による横領の監査
  • 3.固定資産・棚卸資産の確認=架空資産の購入による横領・商品の横流し、盗難の監査
であるからです。

 上場企業はもちろんのこと、中小企業においても社内不正防止のための監査を行っている会社は数多いのですが、新聞記事などを見ても横領・着服などの不祥事は後を絶ちません。なぜ社内監査では不正を発見することができないのでしょうか?



社内監査の限界について

 社内監査にはいくつかの問題があると考えています。一つめは【気持ち・マインドの問題】です。社内監査では「身内が身内を暴く」という状況になりますので、どうしても厳正な監査というものは実行しづらくなります。また幹部社員・役員など権限のある部署ほど実は不正のリスクが存在するというのが常識ですが、社内不正では権限のある部署になかなか立ち入れないという問題があります。

 二つ目は【能力の問題】です。社内監査を行う社員は調査のプロではありませんので、共謀による横領など複雑化した手口の不正を発見することは困難です。また不正を発見するには人材を集中投下して迅速に調べなければ証拠を隠滅されてしまいますが、内部監査ではコストの関係上、マンパワーを大量には投入できず、集中した調査が難しいという問題があります。


なぜ税務調査では不正が発覚するのでしょうか?

 税務調査で不正が発覚する一番の理由は【質問検査権】という法律に基づいた調査であることだと思います。権力を持った調査ですので、

  • 1.調査場所に例外なし(税務署員は権限のある場所ほど不正が起こりやすいと考えます)。
  • 2.無予告による「現物確認調査」で実態を確認することができる。
  • 3.取引先への反面調査・銀行調査を行うことができる。
 という特徴があります。【質問検査権】は強大な権力ですので、理由なく拒否することは不可能なのです。

 また税務当局にはタレコミや資料収集などでありとあらゆる情報が集まってきます。さらに事前調査として、「外観調査」「内観調査」や場合によっては張り込み・尾行まで行うこともあります。
 収集した情報を国税庁のコンピュータシステム(KSKシステム)に入力し、同規模同業種との比較や利益率の検討などの分析を行うことで、調査前に売上除外・架空経費・棚卸除外などの想定を立てて実際の調査に臨みます。

 当然のことながら調査官は調査のプロです。長年税務調査を行ってきた経験から不正のパターンを認識しています。また、調査官は「性悪説」に基づいて税務調査を行いますので、出来上がった帳簿は信用していません。

 提示された記録は改ざんされたものであるかもしれないと考え、常に「真実の記録」を探そうとします。優秀な調査官ほど帳簿よりも「メモ」や「ゴミ」「デジタルデータ」などの原始記録を重視して調査を行います。不審と思われる取引を抽出し、質問をし、疑問点が解消されない場合には取引先に反面調査や銀行調査を行うことで、社内の監査では見つけられなかった不正取引が発見されるということになるのです。

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税務総合戦略室便り 第31号(2011年9月30日発行分)に掲載

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