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予測される相続税の増税

元国税調査官による資産税解説(第一回)

元国税調査官・税理士 黒崎俊夫

元国税調査官・税理士 黒崎俊夫

〈経歴〉
国税局管内税務署資産課税部門に
28年間勤務。

1959年生まれ 資産課税部門職員として、相続税、贈与税及び評価事務に従事。不動産鑑定による評価の審理の経験が豊富。税理士の他、不動産鑑定士、司法書士の資格を有する。






 相続税の増税が予定されています。改正法案の成立時期、施行時期等は全く未定ですが、史上最低の課税割合4.1%(平成21年度)を考慮すると、方向性としての増税路線は変わらないと思われます。

 基礎控除額で4割減、最高税率55%とする原案によると、課税割合は7%近くまで上昇すると見込まれますが(過去最高は昭和62年度の7.9%)、既に東京国税局管内の課税割合は6.6%(平成21年度)に達しており、改正により同割合が10%を超えることになるのは確実です。

 特に都区内に一戸建て不動産をお持ちの方は少なくとも3人に1人は課税になると予想されます。

国税出身者として

 私はこの7月まで、都内A税務署の資産課税部門に勤務しておりました。

 A署管内の人口は約20万人ですが、1年間1500~2000人の方が亡くなられます。年間に提出される相続税の申告書は約100~150件で、内納税額のある申告書は80~100件です。
 A署の場合、死亡届が区役所に提出されると、区役所から同区内にその者が所有する不動産情報とともに通知書が税務署に回付されます。

 それを受けて税務署では、その者に関する他の蓄積情報を合わせて検討し、相続税が課税される可能性があると判断した者の代表相続人(死亡通知書を提出した者)あてに、相続税申告期限4ケ月前を目途に「相続税申告書」及び「相続についてのお尋ね」等を郵送しますが、改正により、税務署の事務量も大幅に増えることになりそうです。

 ちなみに、提出された申告書について、税務署内外の関連資料を収集した後職員が審査して、実地調査対象(実際に相続人宅を訪問して調査を行うもの)とするものは100件中20件程度、事後処理といって疑問点を抽出して税理士さんに確認をする簡易な調査は10件程度です。富裕層の多い地域の税務署では調査割合がより高くなるでしょうが、毎年9月から12月にかけてのこの時期、資産課税部門職員の業務は相続税の調査が中心となります。


他人事ではない相続税

 税務署に勤務していたとき「父が死亡したが相続税がかかるかどうか教えてほしい」という納税者の方が一日一人は相談にいらっしゃいました。そこで路線価を調べ、その他の財産の概算額をお聞きして「基礎控除以下ですので申告は不要です」という結末が7割以上、「小規模宅地等の減額の規定を使えば税金はかからないが申告は必要です」といった結末が2割程度でした。

 しかし、これからは坪100万円の土地を30坪と預金その他の財産が2000万円もあれば、もう申告義務が生じます。

 相続人が子二人の場合、課税価額が2億円だとすると、大雑把に計算して納税額は3300万円になります。マンション一戸買える金額です。納税資金捻出のために育った家を売却せざるを得ないという事態が日常的になろうことは確実です。

 今までは、特定の方のみにかかる税金とされていた相続税が極めて身近な税金になりそうです。


事前対策の必要性

 私は、28年間の資産課税部門の職員としての在任中、税務調査等を通して数百件のご家庭の「相続」に関わってまいりましたが、遺産の多寡にかかわらず、ご家族の実情等、相続に係る問題は各人千差万別であることを実感しております。

 事前の対策をされた方とそうでない方では納税額に雲泥の差が生じます。いわゆる富裕層と言われる方でない方についても相続税は100万円単位でかかってきます。

 まずは、自分が亡くなった時、相続税がどれ位かかるかを怖がらずに認識した上で、節税のための準備を始めることが必要だと思います。

 そしてそのためには、相続問題に精通した専門家に相談することが不可欠だと思っています。

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税務総合戦略室便り 第30号(2011年8月30日発行分)に掲載

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