赤字法人は税務調査がないと思っていませんか?
「税務調査から学ぶ 第三十回」
税務総合戦略室 室長
〈経歴〉国税局課税第二部
1965年生まれ 法人税調査と税務職員の評定・指導・監督業務を行う。 |
「うちは赤字申告だから今年は税務調査がないだろう」という声をお聞きすることがあります。ところが最近、赤字申告法人に対する税務調査がどんどん増えているのです。今回は税務当局による赤字申告法人への対応の変化についてお伝えしたいと思います。
赤字法人への税務調査が増えている理由は?
普通に考えれば利益の出ていない赤字申告であれば、節税や利益調整を行う必要はありません。税務当局も同様に考えていますので、調査先の選定も当然に黒字申告法人が優先されます。
しかしながら、平成21事務年度における法人税の黒字申告割合は25.5%と過去最低の数値を記録しました。今や4社に3社は赤字申告という状況になっているということです。このような状況下においても税務当局は調査を行う割合を落とす訳にはいきませんので、結果として赤字申告法人に対する税務調査が増加しています。
同年度に法人税調査が行われた件数は全国で13万9千件、うち赤字法人への調査が5万6千件で、実に4割以上が赤字法人に対する調査であったということになります。
この数字を見ると「赤字申告だから調査はない」という認識は改めざるを得ないということがご理解いただけると思います。
どんな赤字法人が調査対象になるのでしょうか?
では、どんな赤字法人が税務調査の対象に選ばれるのでしょうか?
税務当局は調査を行ったからには間違いを発見しても赤字の金額を減少させるだけの結果より、黒字に転換させ税金を徴収することを狙っています。その意味では、数千万円規模の多額な赤字申告や繰越欠損金が大きく計上されている申告に対しては調査に二の足を踏むことが多いと言えます。
ただし、多額の赤字申告であっても積極的に調査対象にする場合もあります。それは税負担を免れるための、いわゆる「偽装赤字法人」と疑っている場合です。
- 1.同規模・同業種の法人と比較し利益率が極端に低い
- 2.同規模・同業種の法人と比較し原価率や人件費率などが極端に高い
- 3.貸倒れや除却損など多額の特別損失が計上されている
といったようなケースでは偽装赤字を疑われ、調査が行われる可能性が高くなります。
赤字申告と消費税との関係について
ご承知のとおり、どれだけ法人税の申告が赤字でも消費税の申告・納税には関係ありません。
【消費税の観点】から税務調査の対象とすることも増加してきました。法人税の調査では黒字に転換させることができなくても、消費税の誤りを発見すれば追徴税額を課することができるからです。また、消費税の「不正還付」が相当数あることから、還付申告に対しては還付となった理由を必ず確認するというスタンスを取っています。還付の申告書が提出された場合は、
- 還付金額が多額でない場合『消費税還付申告の内容についてのお尋ね』という文書を送付し、還付理由の回答を求めます
- 還付金額が多額、又は不正還付の疑いがある場合、実地調査により還付理由の解明を行います
平成21事務年度に消費税の還付申告を行っていた法人約1万社について調査を実施し、その追徴税額は177億円、うち不正還付があった件数は1千件を超えました。還付申告書を提出する際には、不正還付との疑念を抱かれないよう、還付理由を詳細に記載するなどして不要な税務調査を招かないようにしたいものです。
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「税務職員の裁量により税金の追徴が行われる」というイメージから多くの方が税務調査に不安を感じていらっしゃいます。裁量により課税が行われる理由は、現実の経済取引には税法では規定し尽せない、いわゆる「グレーゾーン」が存在するからです。税務職員が調査に臨む際の思考回路やグレーゾーンの事実認定に至るまでの調査手法を学ぶことで、税務調査に対する不安感を払拭し、適切な対応と交渉を行うことが可能となります。是非セミナーにご参加いただければ幸いです。
税務総合戦略室便り 第30号(2011年8月30日発行分)に掲載
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